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いびき、危険な睡眠時無呼吸の前段階の可能性…肥満やアゴの小さい人は要注意

取材・文=渡邉由希/医療ライター
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睡眠の謎に迫るプロジェクト

――SASは、どうして起こる?

佐藤教授 SASは、寝ている間、断続的に呼吸が停止する病気だ。そのほとんどが、なんらかの原因で空気の通り道である上気道が物理的に閉塞することにより起こる、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)だ。肥満により舌根や上気道周囲に脂肪がついていたり、扁桃やアデノイドの存在、アゴが小さいなど、もともと上気道が狭い人が寝ると、さらに上気道が狭くなっていびきをかき、閉塞すると無呼吸になる。

 従って、いびきはOSAの前段階のことが多い。上気道が狭くなっている箇所が、音の発生源になっているためだ。いびき音の発生源は、軟口蓋と舌根部が多い。いびきがある場合は、すでにOSAを発症しているか、将来発症する可能性がある。

 あごが小さくなるという“退化”が関係しているケースもある。現代の食品は食べやすく改良(改悪)されたものが増え、硬い食べ物を噛む必要がなくなってきた。その結果、現代人のアゴはどんどん小さくなっている。「アゴが退化している」といえる。このアゴの退化が、少なからずOSAには関係している。

 OSAの治療は、空気圧で上気道の閉塞を防ぐCPAP(持続陽圧呼吸)療法やマウスピースの装着が行われる。また(佐藤教授も開発に携わった)ナステントのように、鼻に柔らかいチューブを入れて、いびきや無呼吸を解消する治療法もある。治療を行うことで、深い睡眠が得られるし、高血圧や心筋梗塞、不整脈、糖尿病、脳卒中など合併症の発症リスクを低減することもできるので、早めに専門医の診断を受けてほしい。

必要な睡眠の量と質を決める遺伝子

――睡眠の“謎”に迫るプロジェクトがある?

佐藤教授 当機構では、2万5000匹以上のマウスを使い、「睡眠の根本」に迫ろうとしているほか、ヒトを対象とした研究も行っている。私たちの研究室では、働く世代およそ1000人を対象に大規模な睡眠調査を実施し、睡眠とメンタルヘルスの関係を探るプロジェクトを進めている。本プロジェクトは、文部科学省から配分された研究費に加えて、クラウドファンディング形式で一般の方々から募った資金で実施しており、将来的にはこの調査の結果を基に、真の「ショートスリーパー」「ロングスリーパー」を探し出し、それぞれの人に必要な睡眠の量と質を決める遺伝子を特定することも目指している(参考:プロジェクトHP)。

 世の中には、短時間で効率的に眠る方法や、ショートスリーパーになるための指南本などが溢れているが、すべての人がそうなれるわけではないので現実的ではない。また夜型や長時間眠らないといけない人にとっては、早寝早起きが良いとはいえないかもしれない。

 この研究が、睡眠に悩む方々の未来を明るいものに変える存在になることを願う。
(取材・文=渡邉由希/医療ライター)

佐藤誠(さとう・まこと)
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構教授。
1982年 新潟大学医学部卒業後、新潟市民病院で初期研修。1985年より新潟大学医学部内科学第二講座医員、1987年より東北大学医学部内科学第一講座国内留学、1989年より新潟大学内科学第二講座医員、1996年より米国ウィスコンシン州立大学マディソン校留学、2001年より上越教育大学生活健康系講座教授・保健管理センター所長、2005年より筑波大学人間総合科学研究科、2015年より現職。

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