「オタキング」の通称で知られる評論家の岡田斗司夫氏が、『いつまでもデブと思うなよ』(新潮社)を上梓したのは2007年。著者の痩せた容貌が説得力を強め、「レコーディングダイエット」が一世を風靡した。食べたものを記録して1日の摂取カロリーを1500kcal以内に収める――そのシンプルな方法も大いに話題を呼んだ。
ところが現在、スリムになった姿は見る影もなく、岡田氏は25kgもリバウンドした。それどころか、かつて自らが提言したレコーディングダイエットを全否定している。
一方、かつて人気深夜番組の企画で、114.6kgから94.8kgまで体重を落とすことに成功したのが、タレントの伊集院光だ。だが後半は、強引な食事制限でやつれ、デブタレントとしての需要にも悪影響が及び、「失敗」と総括された。
そんな伊集院は現在、TBSラジオの朝番組内で、3年かけて132.4kgから95.4kgへと落とすリベンジ企画「伊集院光とラジオとダイエットと」に再挑戦中。自転車行脚なども加えながら、折々の効果測定を実況しており、結果はこの春に公表される予定だ。
体重測定の頻度がダイエットの成否を左右か
さて、こうしてオタキングの失敗例や伊集院の挑戦例をみても、やはり気になるのは「体重測定の頻度」がダイエットにどう影響するかだろう。日々のデータ重視はどこまで必要なのか。「米国心臓協会(AHA)」の見解でも、「頻度は専門家の間でも意見が分かれている」とされている。
“No one size fits all”――。つまり誰にでも当てはまる方法というのはない。「それが我々の考え」と語るのは、米ダラスにあるクーパー・クリニックの栄養士でウェルネスコーチも兼ねるメリダン・ザーナー氏だ。
多くの研究から「体重測定の頻度は、毎日測るのが望ましい」とされているが、その点についても同氏は、「毎日測ることで自信をなくしたり、前向きな姿勢が削がれるようであれば、週1~2回でも構わない」という立場を取っている。
一方、昨年11月に開催された「AHA年次集会」では、やはり「毎日の測定が体重管理に有益」とする知見が発表された。1年にわたり1042名の成人を追跡調査したこの研究では、「週1以下」の測定者が減量しないのに対し、「週6~7回」は平均1.7%の減量が認められた。
「セルフモニタリング」が行動を変える
それでも、結果をめぐる専門家たちの見解はさまざまだ。こうした「セルフモニタリング」と呼ばれる管理法を「あらゆる種類の行動変容に適用できる、エビデンスに基づいた方法のひとつだと考えている」と評価するのは、米セント・ルーク・ヘルスシステム・ハンフリーズ糖尿病センターのエイミー・ウォルター氏。
「自分の行動変化を把握するコトで責任感を持つばかりか、そのフィードバックが『計画に基づいて実行すれば、必ずや変化は現われる』というモチベーションの源ともなる」(ウォルター氏)
半面、頻繁な体重計の乗り過ぎは「呪縛」につながるともいさめる。加えて、「あまりにも測定値にこだわり過ぎると、常にそれが頭から離れなくなってしまう。重要なのは変化そのものに注目すること」だと補足する。
起きてすぐに計るのがベスト
健康的な生活習慣や減量に関する著作を4冊記している米メリーランドの医師、パメラ・ピーク氏も上の意見に賛同し、「毎日の測定は減量目標の達成という点では有用であるものの、その習慣に不安を覚えるようであればやめるほうをお奨めする」と述べる。
いつもの体重計と種類が違ったり、計るタイミングひとつでも測定値は微妙に変わるもの。それが不安要因やモチベーションの低下を生む場合もある。専門筋は「毎日同じ時間帯に計ること」重要とし、特に「起床後にまず計るのがベストタイミング」だと口を揃えて推奨する。
岡田氏や伊集院氏の失敗例にも見られるとおり、壮大すぎる目標や急激/過激な減量挑戦は何よりも御法度だ。「毎日焦らず、地道に、少しずつ」が最良の行動規範といえるのは間違いない。
(文=ヘルスプレス編集部)