体温が1℃低下すると免疫力は30%低下し、発熱、入浴、サウナ、足湯などにより、体温が1℃上昇すると、免疫力は一時的に5~6倍になる、という。がん細胞も35.0℃くらいの低体温でもっとも増殖し、39.6℃以上の高温になると死滅する。
日本人の体温が低下した要因として、以下があげられる。
筋肉運動、労働の不足……交通機関、家電製品の発達普及によるウォーキング、家事労働などの筋肉運動の減少(体温の40%は筋肉で産生)
塩分摂取の極端な抑制……60年前の東北の人の塩分の平均摂取量は約30g/日、鹿児島の人は約14g。今は9g未満が望ましいと指導されている。塩分は体を温める作用が強力だからこそ、寒い東北地方の人々が好んで食べた。
水分摂取の過剰……「血液をサラサラに」という大義のため、飲みたくもない水分を多くとると体が冷える。雨に濡れると体が冷えるように。
体を冷やす食物の過剰摂取……西洋医学、栄養学には食べると「体を冷やす食物」や「体を温める食物」が存在するという概念はない。しかし、漢方医学では2000年も前から前者を「陰性食物」、後者を「陽性食物」と峻別し、健康増進や病気治療に役立ててきた。
体を冷やさない食事
簡単にいうと、外観が「青・白・緑」の食物=陰性食物、「赤・黒・橙」の食物=陽性食物といってもよい。陰性食物を摂りすぎると体が冷える。類似の食物で含有カロリーがたとえ同じでも、陰性食物は食べると体を冷やすし、陽性食物は体を温める。
夏にビール、キュウリ、冷ややっこを食べるとうまいのは、体を冷やす陰性食物だからであり、冬に肉、卵、ネギ、醤油ですき焼きをつくって食べるとうまいのは、これらが陽性食物であるからだ。
ただし、色が濃いのに体を冷やす食物としてトマト、カレー、コーヒーがある。それぞれ熱帯の、南米、インド、エチオピアの原産だからだ。暑いところでとれる食物は体を冷やし、寒いところの食物は体を温めるというのは天の摂理である。
「陰性食物が体に悪い」というのではなく、摂りすぎると体を冷やして免疫力を落とし、うつやがんなどの種々の精神、身体疾患の発症要因になる。よって、日頃「うつ傾向のある人」「自殺願望のある人」は、塩、味噌、醤油、明太子、ちりめんじゃこ、塩じゃけ、佃煮、漬物、赤身の肉、赤ワイン、日本酒の熱燗など陽性食物をしっかり飲食し、ウォーキングなどの筋肉運動を積極的に行い、入浴、サウナ、岩盤浴などで体温を上げれば、うつの予防や改善、自殺予防になる。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)