●アーリーアダプターと販売方法
購入層からも考えてみよう。この品薄の時期にiPhoneを買っているのは、iPhoneをずっと使っていてより良い性能を求めるアーリーアダプター層だ。そんな人たちが5とほぼ同じ性能の5cを買うわけもなく、5s人気は高まる一方だ。
さらに日本では割賦契約が一般的で初期費用は0円なので、どちらを買ってもあまり変わらないと考える消費者も多い。。わざわざ5cを買うのはポップな色を好むライトユーザー、またはiPhone初心者だろう。この層の人たちは発売と同時に買うという人は多くない。結果、5s人気だけが高騰し、5cは売れ残ることになる。
また中国でもすでに発売されているが、富裕層は見栄っ張りな国民性もあって当然5sだろう。しかも彼らの好むゴールドが発売されているのに、他の色を買う意味はないはずだ。そして中間層にしてみれば、5cの価格でも高すぎる。1万円出せばAndroidのスマートフォンが買えるのに、日本円で8万円以上するiPhoneは買わないだろう。
●5cはいつ売れるの?
さて、それでは5cは売れないのか? というと、実はそうでもないのではないかと思える。カギは先ほども書いたiPhone初心者と、やはり今後発売される新興国だ。
日本では、iPhone初心者が多いのは当然NTTドコモのユーザーだ。ドコモでないと電波が入らなかったり、家族割の適用があるからMNPで他キャリアへ移れなかった人たちがようやくiPhoneを手に入れる機会を得たわけだが、発売当初はspモードメールが使えないなどの問題があって、iPhone購入を見合わせていた層がいた。しかし、10月1日からspモードメールのサービスも開始されたこともあってか、直近の調査ではドコモiPhoneの売り上げは国内携帯電話売上ランキングでトップになった。いよいよ本格的にドコモでiPhoneが売れ始める予感だ。このドコモユーザーが最初に使うモデルとして、5cを選ぶことが増えるかもしれない。
しかしやはり圧倒的に期待できるのは、今後発売される新興国だろう。iPhone 5s/5cは12月までに全世界100カ国以上での販売が予定されている。現在の売上不振を受けて新興国で価格を抑えるためのなんらかの施策がされ、5c本来の意味が発揮できれば可能性は十分にある。こちらも「最初のスマートフォン」として、iPhoneを買ってもらうことができるのではないだろうか。
いずれにしろiPhone 5cはいろいろな部分を見誤った製品といえるかもしれない。せめて5sと同じ性能だったら……せめてメモリが64GBだったら……。いや何より「価格を抑えてでもユーザーを獲得する!」くらいの戦略が欲しかったところだ。
(文=風間新)