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「World」プロジェクト日本初発表会が開催…あなたは人間ですか?AI時代に求められる“証明”の最前線

2025.05.17 2025.05.31 20:07 IT
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「World」プロジェクトの日本初発表会

●この記事のポイント
・2025年5月15日、AI時代における「人間性の証明」という新たなデジタルインフラを提供する「World」プロジェクトの日本初発表会が開催された
・プライバシーを守りながら「人間であること」のみを証明するWorld IDは、インターネットの信頼基盤として機能することが期待される

 2025年5月15日、AI時代における「人間性の証明」という新たなデジタルインフラを提供する「World」プロジェクトの日本初発表会が開催された。OpenAIのサム・アルトマン氏とアレックス・ブラニア氏が共同創設したTools for Humanityによる同プロジェクトは、AIの進化によって生じる「ボットと人間の区別困難」という課題に対し、プライバシーを守りながら「人間であること」をオンラインで証明する仕組みを提供するものだ。

●目次

AI時代の信頼性に関する実態調査

 本フォーラムでは冒頭、アクセンチュアの協力による「AI時代の信頼性に関する実態調査」結果が報告された。それによると、日本では生成AI利用経験者は全体の約40%に達し、半数以上が「AIに対する不安」を感じている。特に「なりすましや偽アカウントの増加」を懸念する声は76.6%に上り、フェイクニュースやディープフェイクに対する不安も高い水準にあることが明らかになった。

Worldプロジェクトの概要

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 Tools for Humanity日本代表の牧野友衛氏は、現代インターネット環境の課題として、不正BOTによるチケット転売、偽アカウントによるフェイクニュース拡散などを挙げ、「AIが進化・普及する社会では、これらの問題がより深刻化する」と指摘した。

 Worldプロジェクトはこの課題に対応するため、Orb(オーブ)、World App、World ID、Worldcoinという4つの要素で構成されている。Orbは虹彩スキャンにより「生きている人間」を確認し、匿名のコードを生成する特殊カメラデバイスだ。World Appは個人のスマートフォンで完結するウォレットアプリで、100カ国以上、90%以上のスマートフォンで利用可能となっている。World IDはプライバシーを守る認証プロトコルで、オンライン上で「人間であること」を証明する。Worldcoinは暗号資産だ。

 牧野氏によれば、現在世界22カ国以上でOrbが展開され、World Appユーザーは2600万人、認証ユーザーは1200万人に達しているという。特に米国では5月1日から6都市で認証を開始し、今後12カ月でアメリカ全土に7000台のOrbを設置する計画だという。

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多数の来場者がOrbを体験。革新的なインターフェースに、業界関係者からも高い関心が寄せられた

日本での展開状況

 日本国内では現在、全国約60カ所以上でOrb認証を常設しており、今後さらに拡大する方針だ。最近の取り組みとして、総合デジタルショップ「テルル」の全国11店舗での認証開始や、5月16日からは「BAROQUE JAPAN LIMITED」が展開するファッションブランド店舗(The SHEL’TTER TOKYO 東急プラザ表参道『オモカド』店)でのOrb認証開始が発表された。

 また、国内でのWorld ID活用事例として、SNSの「Yay!」、グルメレビューアプリ「SARAH」、Web3ゲーム「TOKYO BEAST」の3社が紹介された。特に「TOKYO BEAST」については、プロデューサーの本橋直樹氏が登壇し、ゲーム業界におけるボット対策の重要性と、World IDの導入効果について解説。本橋氏は「Web3ゲームはNFTなど資産価値を持つ要素が含まれるため、ボット対策が非常に重要」と強調し、「World IDによる認証で、複数アカウントを使った不正プレイを防止できる」と述べた。同ゲームは来月リリース予定で、World ID認証ユーザーには特典を提供するキャンペーンを実施する予定だという。

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日本独自の取り組み

 世界展開とは別に、日本では独自施策も進行中だ。まず「双方向のお友だち招待プログラム」として、紹介者・被紹介者双方にインセンティブを提供する施策を2月末から実施。これは日本の習慣に合わせた制度設計だという。また、東京・大阪での「コミュニティ・ミートアップ」を通じて、ユーザーとの意見交換の場を設けている。さらに注目すべきは岡山県「World・奉還町商店街プロジェクト」だ。これは3月から開始された取り組みで、World ID登録者がWorldcoinを商店街の商品券と交換できるシステムを構築。商店街の活性化とWorld普及の両立を目指しているという。

生成AI活用普及協会(GUGA)との連携

 本フォーラムでは、一般社団法人 生成AI活用普及協会(GUGA)への加盟も発表された。GUGA業務執行理事・事務局長の小村亮氏が登壇し、GUGAの取り組みについて紹介。2023年5月に設立されたGUGAは196社(2025年5月8日時点)の会員を持ち、「生成AIパスポート」など人材育成を軸としたサービスを展開しているという。小村氏は「今後AIエージェントが増える中で、人とAIを識別することが重要テーマになる」と指摘し、「Worldプロジェクトが市場の信頼を支える基盤となることを応援したい」と連携の意義を語った。

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パネルディスカッション「AIと人間の共存」

 フォーラム後半では、牧野氏とデジライズ代表取締役社長の茶圓将裕氏によるパネルディスカッションが行われた。茶圓氏は270社以上・2万5000名以上へのAI導入支援実績を持ち、SNSでもAI業界の有力インフルエンサーとして知られる人物だ。

 はじめに「生成AIによるなりすましリスク」について議論が交わされた。茶圓氏は「SNSでの投稿に対して、すぐに20~30個のボットが反応する状況」や「自分のアカウントを装った詐欺的投稿」の具体例を挙げ、対策の必要性を強調。特にTwitter(現X)ではイーロン・マスク氏買収後もボット問題が深刻化していると指摘した。牧野氏は、電話番号認証などの従来手法ではAI時代に対応できず、「人間であることのみを証明し、他の個人情報を必要としない」World IDのアプローチが最適解だと説明した。続けて、「運転免許証を見せる際に、年齢確認だけなのに氏名や住所など全情報を見せる必要はない」という例を挙げ、ゼロ知識証明技術の価値を強調した。

 最後に「AIと人間の共存」について考察が深められた。茶圓氏はAIを「師匠」と表現し、「常にIQが高い存在に触れることで人間も賢くなる」と前向きな見方を示した。仕事効率が「5倍ほど上がっている」という実感も共有し、将来的にはロボット数が人口を上回る社会になるとの見通しを示した。牧野氏は「悪意のあるボットと有益なボットの区別」の重要性を指摘し、「AIの進化による社会的恩恵を最大化するためには、信頼基盤が不可欠」と締めくくった。

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 生成AIやディープフェイク技術の発展により、オンライン上での「人間」と「AI」の区別が困難になりつつある中、プライバシーを守りながら「人間であること」のみを証明するWorld IDは、インターネットの信頼基盤として機能することが期待される。

 日本国内では、携帯ショップ、ファッション店舗、商店街など多様な場所でのOrb設置が進み、SNS、レビューアプリ、ゲームなどのサービスでWorld IDの活用が始まっている。今後はGUGAとの連携を通じて、生成AI教育と組み合わせた社会実装が加速することになりそうだ。

(文=秋葉けんた/ITライター)

※本稿はPR記事です

秋葉けんた/ITライター

秋葉けんた/ITライター

IT分野専門のライター。B2CからB2Bまで幅広く執筆し、事例制作も手掛ける。PDA時代からガジェットが大好きで、取材を通じて常に新知識を探求している。
秋葉けんたプロフィール