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住宅金融支援機構と銀行の怠慢で、「庶民の味方」に黄色信号

住宅ローン・フラット35を危機に晒す、銀行のずさん審査

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住宅ローン・フラット35を危機に晒す、銀行のずさん審査の画像1住宅金融支援機構を所管する国土交通省
(「Wikipedia」より)
 庶民の住宅取得を支援する、住宅金融支援機構(以下、機構)の長期固定金利住宅ローン「フラット35」の営業について、ずさんな審査態勢が問題視されている。

 このほど会計検査院が内閣府に提出した報告書によると、機構の提携先である338金融機関のうち、「フラット35」の取扱量が多く、不適切な案件が多くみられる39金融機関を調査したところ、勤務先や収入等の虚偽申告を確認せずに、機構に債権を買い取らせていた金融機関が8~9割に上り、このうち6割の金融機関では改善すら行われていない実態が明らかになった。

 この中には、

「無職であったが、虚偽の勤務先および収入を申告して4000万円の融資を受けた。しかし、金融機関は収入証明書類の提出を求めず、確認を行っていなかった。そして10回分(71万円)の返済しか行われず延滞した」
「別人名義で、虚偽の申告で1790万円の融資を受けた。しかし、金融機関は提出書類の矛盾に気付かず、2回分(18万円)しか返済が行われず延滞した」

など、悪質なケースが数多く含まれている。「フラット35」は国の財政支援を受けていることから、今後、国会の場で厳しく追及される可能性がある。

 機構は、旧住宅金融公庫が特殊法人改革により廃止されたのを受け、2007年に設置された独立行政法人で、住宅ローン債権の証券化業務を通じて、低利で長期固定の住宅建設資金等を供給している。その主力商品が、期間35年の住宅ローン「フラット35」である。

 その仕組みは、「フラット35を取り扱う金融機関から、同債権を買い取り、
それを担保として債券(MBS=住宅ローン担保債券)を発行することで、長期の資金調達を行い、民間金融機関による長期固定型住宅ローンの提供を支援する」(機構)もので、12年3月末までに買い取った債権の累計は10兆3139億円まで拡大している。いわば官民一体となって庶民の夢である住宅取得を後押しする金融スキームだ。しかし、その根幹となるべき金融機関の融資審査がずさんではどうしようもない。

●自行の融資のみ、念入りな審査を行う銀行

 とくに問題視されるのは、不適切な案件が多い金融機関では、「自行のプロパー融資については、関連会社である保証会社を通じるなどして個人情報機関を利用した調査を行っているのに、フラット35については、機構において必要な審査が行われているはずであるとして、自らはそのような調査を行っていなかった」(会計検査院)というモラルハザードが生じていること。

 金融機関は、「フラット35」では基本的には融資の信用リスクを負わないため、いい加減なチェックで融資し、機構に買い取らせていたことになる。機構では、金融機関に融資審査を厳格化するよう要請はしているが、「その実行を義務付けているものではない」(同)のため、改善はなおざりになったまま。

 このため、会計検査院では、「事実表明の重要な点において誤りがあり又は事実表明が不正確であったことが判明した場合」は、機構は金融機関に対し債権の買い戻しを請求したり、機構に生じた損害等を補償することを金融機関に求めるよう示唆している。また、「金融機関ごとに融資審査の状況に応じて提示金利に差を設ける仕組みを導入する」ことも提言している。

BusinessJournal編集部

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