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格付けの格下げも避けられない見通しだ。すでにムーディーズ・インベスターズ・サービスはVWの格付けを「安定的」から「ネガティブ」に変更、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も引き下げ方向での見直し方針を公表している。
加えて、ライバル各社をリードするかたちで開拓してきた中国市場が、経済危機の影響で販売不振に陥っていることも、VWにとって強いアゲンストの風だ。中国を含む新興市場での躍進は、トヨタと米ゼネラル・モーターズの2強が争ってきた世界自動車市場のトップ争いに、VWが近年、割って入る原動力だった。今年1~6月時点では、世界新車販売でトヨタを抑えて首位に立ち、年間でも世界最大のメーカーの座を射止める可能性があるとみられていたが、不正発覚前の7月にトヨタに再逆転されている。VWの失速は避けられないだろう。
それどころか、生産工場の経営に全米自動車労組(UAW)の参加問題を抱える米国市場で、これまでのようにビジネスを継続できるかどうかさえ疑問視されている。VWの米市場での市場シェアはわずか2%程度。「少なくともディーゼル車は撤退を余儀なくされるのではないか」(自動車業界団体幹部)といった見方が浮上しているのだ。
こうした状況を反映して、VW株も急落している。一時は4割以上下げて、時価総額でダイムラーに逆転を許した。独株価指数DAXは9月24日に年初来安値を更新したが、市場のムードを冷え込ませているのがVW問題だ。
ドイツ本国では、VW本体だけで27万人の従業員を抱えており、今回の不正発覚でリストラを余儀なくされ大規模な解雇に踏み切れば、EU域内のけん引役であるドイツ経済が変調をきたす引き金になりかねない。金融・資本市場では、「ギリシアの債務問題に代わる新たなリスク」と懸念されているという。
世界経済の行方を左右する問題に発展しかねないだけに、我々も対岸の火事と傍観してはいられない。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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