森林には、土壌が降水を貯留し、河川に流れ込む水量を平準化して洪水を防止すると共に、川の流量を安定させる機能がある。また、雨水が森林土壌を通過することにより水質が浄化されるほか、土砂の流失を防止するといった機能もある。
こうした公益的な機能に対し、受益者である個人や企業が対価を支払い、森林や里地里山などの自然環境を維持・回復するための「森林環境税(仮称)」創設が、環境省や林野庁を中心に検討されている。
すでに、森林環境税は多くの県が地方税として導入している。2003年、高知県が初めて「森林環境税」を創設し、その後は各県が導入、15年度には35県で同様の目的の税が導入されている。また、市町村では09年に神奈川県横浜市が緑の保全・創造を行うための財源として「横浜みどり税」を導入した。
現在、各県が導入している森林環境税は、県民税の超過課税となっている。超過課税とは、地方税法上で定められている標準税率を超える税率を条例で定めて課税する方式だ。簡単にいえば、県民税に森林環境税が上乗せされたかたちである。
しかし、県民税は使途が特定される目的税ではなく普通税のため、「森林環境税が、本来の目的外の用途に使われるのではないか」という疑念も湧く。
そこで、山口県と鹿児島県以外の県では、森林環境を保全するための基金を立ち上げ、県民税に上乗せ徴収した森林環境税を同基金に入れることで、実質的に目的税化している。これは、主に以下の4つのために使われている。
(1)森林の公益的機能を高めるための整備
(2)木材の利用促進
(3)林業従事者を確保するための担い手の育成
(4)森林保全のためのボランティア、NPOの支援
こうした状況を受け、環境省と林野庁が森林整備などの財源確保のために、地方自治体が導入している森林環境税の国税版を検討しているのだ。両省庁とも、すでに15年度税制改正要望に盛り込んでおり、年間で1000億円程度の税収を得たい意向だ。
森林環境税が成立しづらいワケ
実は、森林を中心とした公益的機能の維持を目的とする税の導入は、これまで何度も検討されている。主な流れは、以下の通りだ。