有名な観光地をはじめ各地でトラブルが続出
1カ月で約165万人。1日当たり5万人以上の外国人が日本を訪れる状況が続いているわけだが、手放しで喜んでばかりはいられない。有名な観光地などでトラブルが続出しているのだ。長崎県の温泉地を訪ねたある旅行者がこうぼやく。
「無料の足湯に浸かってのんびりしていたら、観光バスが停まりアジア系の団体が押し寄せてきました。先にいた数組の日本人客は彼らのために場所を空けたのですが、お礼も言わず、挙句は大声で歌い始めて大騒ぎ。せっかくの癒しタイムが台無しになりました」
このほかにも各地でトラブルが起きている。たとえば北海道札幌を訪れた中国人夫婦の起こした事件が話題になった。コンビニエンスストアで会計前のアイスクリームを妻が食べ始め、注意した店員を夫婦で暴行したのだ。また大阪・ミナミのコンビニで万引きをとがめられた十数人の外国人が店員に暴行を加えて逃げるという事件も発生している。観光地では、「トイレの使い方がめちゃくちゃ」「ホテルの備品を持っていかれた」など、苦情が相次いでいる。
習慣の違いによるマナー違反程度なら苦笑いで済ませられるが、犯罪にエスカレートするケースまで出てきているだけに看過できない。
宿泊先の不足も深刻な問題だ。東京、大阪、京都といった大都市圏では、ビジネスホテル、シティホテル共に客室稼働率が80%を超え、ビジネスパーソンが出張時に宿泊先をなかなか確保できないといった事態が日常化しつつある。
一方で、「宿泊施設のキャパ(収容能力)が足りず、中国人の団体客が東山や嵐山といった人気エリアの観光だけで済ませ、宿泊せずに移動してしまう」(京都の観光関係者)といったケースも出てきている。
宿泊施設の不足に目を付けた業者が参入している民泊をめぐっても、旅館業法違反の業者が摘発されるなど、各地でトラブルが続出。インバウンド急増のツケが至るところで噴出してきている。
政府が昨年10月に開いた「国家戦略特区に関する諮問会議」で安倍晋三首相は「国家戦略特区は、規制改革の突破口。日本を訪れる外国の方々の滞在経験を、より便利で快適なものとしていかなければなりません。このため、旅館でなくても短期に宿泊できる住居を広げていく」などと規制緩和の方針を明らかにした。こうした流れを受け、自治体では「民泊条例」の制定が進むなどの動きが出てきているが、滞在条件が7日間以上とされるなど「現実にそぐわない」といった問題点が指摘されている。
政府は外国人観光客による国内観光・消費で経済の活性化を図ろうという狙いだが、肝心の受け入れ態勢の整備が後手に回っているのが実情。つまり、総合戦略がなってないのだ。民泊条例など自治体任せにするのではなく、国としてきちんとした基準づくり、法整備を行うのが先決ではないだろうか。
(文=編集部)