住む家も食べ物もない、風呂も入れない…簡単に「生活困窮者」へ転落する日本
そして現在は、就職が難しいので、キャリアコンサルタントを入れて就職支援を始めました。また、就職が決まっても居場所がないという状況も多く、場合によってはホームレスだった頃のほうが人間関係があったというケースもあるので、地域との橋渡しをするための活動を始めています。
POPOLOが生活困窮者支援のモデルケースになる?
金子 日本の福祉政策は、理念だけ北欧や西欧から取り入れ、表面的な政策をつまみ食い的に真似しているというのが現実です。生活困窮者自立支援法のように、「ワンストップサービス」といいながらサービス供給者がいなかったり、一人ひとりに寄り添うケースワーカーが制度化されていなかったり、地域全体で個々人の事情に合わせたサービスができていません。つまり、隙間だらけなのでNPOが活躍する余地がたくさんあるのです。POPOLOはそれを“静岡モデル”とすべく、地域全体を巻き込んで地域単位でシステムをつくろうとしているところに意味がありますね。
鈴木 支援法は良くも悪くも私たちNPOや学者、行政の人たち全員で「つくっていくことができる」ような自由度があるんです。だからこそ私たちが「こういう解釈はできないか」とか、「こういうやり方はどうだろう」と提案していき、行政の方もどんどん取り入れて、地域も巻き込んでいく。自由度が高いことを逆手に取って、僕ら活動家はアプローチしていく必要があると思います。
金子 静岡に強いこだわりがありますね。静岡以外にも活動を広げようという気持ちはありますか?
鈴木 生まれ育った静岡が好きですし、各々が少しずつがんばればいいという気質があって静岡は心地よいです。静岡には樹海もあって自殺志願者が多いから、地元の人は自然とそういう姿勢になるのかもしれませんが(笑)。
不便な面もあり、干渉も多いかもしれませんが、良い連帯感もあります。生活に困窮した方々も、東京で切羽詰まったから漂流して静岡に居つくという人が多いです。かつて東京の自立支援センターに入っていた方もいて、「東京ではこんなふうにアットホームな雰囲気はなかった」と言うのです。うちは最低限のことはやってもらいますが、規則は厳しくありません。こういったつながることのできる居場所が静岡にあるというのが大事なのです。
どんどん世に出て活動を広げられる人と、地域に根差しながら活動をする人に分かれると思いますが、私は後者です。日本中に想いのある人はいるはずで、どんどんこの静岡モデルをマネして、地域独自のモデルをつくり上げてもらえればいいと思います。
金子 地方都市ゆえの強みを生かした、新しいモデルの可能性に期待します。
(構成=松井克明/CFP)