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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

安倍首相「消費増税なければ、アベノミクスはうまくいっていた」「失敗であった」

文=渡邉哲也/経済評論家

 7月には参議院議員選挙が予定されているが、選挙の際、消費税増税に対して「賛成」と「反対」という二者択一になった時、多くの国民は「反対」を公約に掲げるほうを選ぶだろう。そのため、自民党・公明党が「賛成」を選ぶというのは現実的ではなく、「反対」の立場で選挙戦を戦わざるを得ない。

 だからこそ、昨年末頃から「消費税増税を延期して、衆参ダブル選挙」という予想が生まれてきているわけだ。また、それを受けて、各派閥や国会議員に「選挙準備をしておくように」といった通達が出たという話も聞こえる。

4月の衆議院解散総選挙もあり得る?

 実際、衆参ダブル選挙はあるのだろうか。現実的な選挙日程を考えてみよう。1年で最も大切な政治日程は、予算の成立である。新年度の予算が成立しなければ、4月1日からの公費の支出が止まり、日本経済に大きなダメージを与えてしまうからだ。

 3月1日、平成28年度予算案が衆議院を通過した。憲法規定の「衆議院の優越」により、参議院に送られてから30日で自動成立するため、年度内の3月末には成立する見込みだ。

 しかし、予算成立後にも大きな仕事がある。予算とともに、予算関連法案を通す必要があるのだ。これは、赤字国債発行のための特例公債法案や、かつてガソリン税の暫定税率が問題になった税制改正法案などが当てはまるものである。

 これは予算案と違って自動成立の規定がないため、参議院で可決する必要がある。そして、成立しないと政治的に不安定な状況を生んでしまう。

 現在、参議院の議席は与党が過半数を握っており、容易に成立させられる状況ではあるが、あまりに急げば、野党から「強行採決だ」と批判の声が上がることは間違いない。

 そのため、「しっかりと議論をした上で、予算案および予算関連法案を早期に成立させる」というのが、今国会の役割だ。安倍首相が、予算案通過後に「来年度予算案の早期成立こそが、最大の景気対策」「1日も早い成立を目指して、緊張感を持って取り組んでいきたい」と語っているのも、そのためである。

 そして、予算が成立した後、「では、消費税増税についてはどうするか」という議論が本格化するものと思われる。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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