これについて、担当する市資産経営戦略課の鈴木貴之主幹は「スケートボードは2020年の東京オリンピックで正式種目に選定される見込みで、行政からは出てこない民間ならではの斬新な提案だ」と評価する。しかし、応募企業側からは「スケートボード場はむしろ市側が造りたいとして主体的に進めてきたプランだった」と、食い違った話も出てくる。コンサルタント業務を手掛けた大阪市の五星パブリックマネジメント研究所の天米一志所長は「若者グループからスケートボード場がほしいという声は確かに出ていた。提案の発端はあくまで事業者からだが、交渉の中で市が乗り気になったということだろう。いずれにしてもエクストリームパークは全体の中では付帯事業のような位置付けで、それ以外のコアな事業をしっかりやることに意味がある。市営住宅も、従来ならまったく取り入れられない市民の意見が、まだこれから入る余地があるのが今回のPFIだ」と釈明する。
縮小案で仮契約も、深まる混迷
しかし、ふたを開けて唐突に出てきたスケートボード場や、「327億円、30年間、1社にお任せ」といった数字のインパクトで、波紋は一気に広がった。ネット上には378億円に上る市の借金(14年度の市債残高)と比較して、この事業を進める市長や市議会を「お花畑だ」と揶揄する動画が「#西尾死ぬかも」のハッシュタグとともに拡散されている。
市民集会を主催した「身内」である市職員組合は「公共施設再配置には賛成だが、西尾市方式PFIは当初の理念から大幅に外れており、税金の節約にはつながらない。私企業の思惑に翻弄される将来像が見え、市に明るい未来は見いだせない」と主張。これに対して市の鈴木主幹は「公共事業の考え方を180度変えなくてはならず、PFIには必ずアレルギー反応がある。西尾ではそれが今、頂点に達しているのだろう。われわれとしては産みの苦しみだと思っている」と強気な姿勢を示した。
反対運動が高まる中で、市は5月30日に企業グループと仮契約を締結。ところが、そこでどんでん返しがあった。懸案のスケートボード場や、建て替えが急務といわれていた学校給食センターの2施設が外れ、さらに新設以外の維持管理業務などの事業期間は30年間から「15年間」に変更、総事業費は税込み約215億円に圧縮されたのだ。
これらの変更は「市民の不安感を払拭するため、断腸の思いで決断された」(鈴木主幹)という。ただし、2事業とも実現に向けた協議は続けられ、スケートボード場はさらに具体化できれば「追加提案」も可能だとする。事業期間も、16年目の実績を踏まえて契約更新もできる内容だ。仮契約に合わせて発足したSPC「エリアプラン西尾」事務局も「まったくやめてしまうわけではない」と継続協議であることを強調しながら、「今回は従来の造るPFIではなく、削るPFI。少ない予算の中で、市と協議しながらギリギリでやっているつもりだ。われわれは幹事役として、最終的に140社近くになる見込みの参加企業をまとめたい」と意気込む。