「ネイリストの資格も取れる」とアピールする自衛隊
上図は、自衛隊が任期制隊員を勧誘するための資料です。自衛官とサラリーマンの給料の比較をしています。
自衛隊なら駐屯地の生活なので、家賃、食費、衣服、生活費はかかりません。毎月手元に6~7万円残るので、仕送りをしたり貯金をすることができます。実際に、母子家庭で育った方が親へ仕送りをしている例も少なからずあります。
民間の企業へ就職するとお金に余裕がなく、いざ病気になった場合に医療費の心配もしなければならないと不安を煽り、自衛隊は部内の病院や医務室で原則無料の治療が受けられるので、民間企業よりも自衛隊に入隊することを勧めています。
また、自衛隊に入れば、辞めた後の再就職サポートも充実しているとアピールしています。代表的なのは、資格や技術の取得です。フォークリフト、移動式クレーン、危険物取扱者、衛生管理者、溶接、パソコン基礎などの資格を取ることができます。女性限定の資格として、医療事務、ブライダルプランナー、ネイリストも取れます。
少子化で今後募集が困難になるため、女性隊員も集めなければ採用目標が達成できなくなります。そのため、女性にとっても魅力的な自衛隊であることを訴えるために、このような資格も用意しているのです。
自衛隊は10年以上前から、来る募集難時代に備えた対策を検討しています。そのひとつが、民間企業とタイアップしたインターンシップ制度です。民間企業に就職が内定した新入社員を自衛隊が1~2年預かり、立派な社会人に育てるというシステムです。
企業側のメリットは、自衛隊で鍛えられ、指示すれば的確に動くような“体育会系人材”を一定割合で確保できるという点です。防衛省側のメリットは、厳しい募集環境のなか、若くて有能な人材を毎年一定程度確保できることにあります。
また、元陸将の廣瀬誠氏が2015年9月2日付朝日新聞の記事の中で、「進学したいのにお金がない若者を支援するため、自衛隊に入れば入学資金を得られるような制度も考えられるべき」と語っています。これはまさにアメリカのように、自衛隊独自の奨学金制度をつくることで隊員を募るという考え方です。
現在も、将来の自衛隊の技術系幹部を養成するための「貸費学生」という独自の奨学金制度があります。医学系、理工学系の大学3年生以上を対象に毎月奨学金を与え、その代わり卒業したら自衛隊に入ってもらうというものです。自衛隊で何年間か務めると、返済の必要がなくなる奨学金です。「国には給付型奨学金がないが、自衛隊にはある」とアピールしているわけです。自衛隊は、この貸費学生の枠を拡充しようとしています。