自衛隊の海外派遣は1990年代に始まりましたが、その目的は国際貢献とされてきました。しかし最近は、国際貢献ではなく「国益のため」といっています。2009年1月、第2代中央即応集団司令官の柴田幹雄陸将は、次のように訓示しています。
「中央即応集団は、海外における国家目的や戦略的利益を追求するためのツールもしくは手段として使用される」
本来、自衛隊は専守防衛で、外国からの侵略を排除するための実力組織だったはずです。それが、いつの間にか上の訓示のように我々国民が知らないところで自衛隊の目的が勝手に変えられ、海外での国益を追求するためのツールとされてしまっているのです。
それを象徴しているのが、現在安倍政権が進めようとしているアフリカのジブチに自衛隊が置いている基地の恒久化です。もともとは海賊対処活動のためにつくった基地ですが、去年の海賊の出没はゼロでした。目的が消滅したにもかかわらず、ジブチの基地を恒久化し、自衛隊活動の海外拠点にしようとしているのです。
その背景には、アフリカの豊富な資源へのアクセスやこれから著しい経済成長が予測される市場への進出を目指していることがあります。そのためのツールとして、自衛隊を使おうとしているのです。
確かに、日本はエネルギーを海外に依存していることもあり、シーレーンを守ることも政府の大事な仕事のひとつでしょう。しかし、そのために自衛隊を海外に送り、場合によっては自衛官の命が危険にさらされることも仕方ないという姿勢は間違っているのではないでしょうか。
少なくとも、日本は戦後70年間、海外での経済的利益や国益追求のために軍事力は使わない国として歩んできました。それを180度変えようとしているのが安倍政権です。国益追及のためなら自衛官の犠牲が出ても仕方ないなどという国にはなってほしくありません。
経済的徴兵制の最大の問題は、海外での国益追求のために、経済的に厳しい若い人たちの命を消耗させることです。アメリカはずっとそれをやってきました。日本も同じような道をたどっていいのかということが問われているのです。
(構成=林克明/ジャーナリスト)