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江川紹子の「事件ウオッチ」第76回

江川紹子がフェイクニュース騒動を検証…産経新聞の「辻元清美の3つの疑惑」に異議あり!

文=江川紹子/ジャーナリスト

 また、「作業員派遣」については、当人(ここではAさんとしておく)が「辻元さんには会ったこともない」「僕自身は、辻元さんは大嫌いなんです」と、辻元氏との関わりをきっぱり否定している。TBSラジオで荻上チキ氏のインタビューにも答えているし、私自身も直接確認した。生コンの「関西なんとか連合」についても、Aさんは「うちは業種も違うし、事業所が大阪、兵庫にないから、入るのは不可能」と関わりを否定する。

 一方、メールの内容を裏付ける証言や証拠は出てきていない。

 ほんの一手間かけて確認すれば、メールに書かれていた辻元氏に関する記載は事実ではないとわかる。

事前に事実確認せずに報道

 ところが産経新聞は、メールが公表されてから4日後の3月28日付紙面で、「辻元氏 3つの疑惑」「『拡散やめて』民進、メディアに忖度要求」との見出しで、メールのこの部分をクローズアップする記事を掲載した。辻元氏が森友学園の小学校予定地を視察している写真が添えられている。

 記事のリード部分では、「(辻元氏に関する)『3つの疑惑』が新たな争点に浮上し、日本維新の会などが追及姿勢を示している」とし、「疑惑」が存在することを前提に、「民進党は誤った内容だとメディアに情報を広めないよう『忖度』を求めるが、籠池氏の発言に依拠して首相らを追及しながら、都合の悪い妻の言葉は封じようとする矛盾に陥っている」と同党を批判している。

 取り上げられている「疑惑」のうち2つは、諄子氏のメールからのもので、「幼稚園侵入」「作業員派遣」の小見出しがついている。

 記事の中身は、すでにネットで「辻元の疑惑を伝えないマスコミ」「辻元清美にブーメラン」などと書きたてられていた域を出ない。

 本文中には、「そのようなこと(=幼稚園侵入)は一切なく同議員(=辻元氏)は塚本幼稚園の敷地近くにも接近していない」「諄子氏が指摘したであろう作業員は辻元氏と面識はない」とする民進党関係者のコメントも紹介はされている。

 産経新聞は、辻元氏が東日本大震災で災害ボランティア担当の首相補佐官に任命された時、2回にわたって批判する記事を掲載した。その中で、辻元議員が1992年のカンボジア視察の際に、復興活動をしていた自衛官に「あんた! そこ(胸ポケット)にコンドーム持っているでしょう」と発言したとか、阪神大震災の被災地では反政府ビラをまいたなどと書いて、辻元氏に名誉毀損で訴えられた。東京地裁は、いずれも真実でないとして、辻元氏側の取材をしていないことも指摘し、産経新聞に対し80万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡し、確定している。

 そういうこともあって、民進党関係者のコメントも一応入れたのだろうが、断定を避けて「疑惑」という表現にとどめればよいというものではない。同紙自身が情報の真偽を確認せず、見出しやリード部分のインパクトで、辻元氏に「疑惑」が存在しているかのような印象付けを行い、読者を誘導する仕立ては、意図的な情報操作の臭いも感じる。

 Aさんによれば、以前、汚染土の埋め戻し問題で同紙の記者に取材を受けたことがあったが、本件では記事掲載前に事実を確認する取材はなかった。

 同紙がAさんに話を聞いたのは、記事がすでに紙面に載った28日が最初だったという。Aさんは、記者に辻元氏とは面識がないことを説明した。これに対し、記者は「あ、そうですか。関係なかったんですね」と軽い反応しかなかった、とAさんは明かす。

「フジテレビの『Mr.サンデー』と『とくダネ!』でも、辻元さんと関わり合いがあるのじゃないか、というような報道をされたので抗議をした。(僕は)同じフジテレビの『新報道』ではカメラを回してインタビューをされ(関わりがないと話し)ているのに、『同じ局なのに情報共有してないのか』と。そうしたら、『申し訳なかった』と謝罪がありました」

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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