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江川紹子の「事件ウオッチ」第81回

ウソやごまかしの果てに…江川紹子が指摘する「共謀罪法案成立後に残された3つの論点」

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 たとえばイギリスでは、イラク戦争に関して検証委員会が数次にわたって設けられた。さまざまな公文書が供されたほか、開戦当時のブレア元首相ら政治家や諜報機関の幹部も聴取。ブレア元首相の証言は、インターネットで中継された。

 それに比べて日本はどうか。

 陸上自衛隊のPKO日報が隠されていた問題や森友・加計問題における政府の対応を見るにつけ、健全な民主主義が機能するために、もっとも重要な国民の知る権利に対する現政権の認識は非常に危ういと言わざるを得ない。

 戦争の開始という安全保障上の政府判断に関してさえ、議会や検証委員会で国民に開かれた形で検証したイギリスと、行政の判断に至るプロセスや刑事司法に関する情報がなかなかオープンにならない日本とでは、状況が違いすぎる。そんななかで、「イギリスでこうなっているから日本も」と単純にはいかない。

 また、アメリカでは先日、コミー前米連邦捜査局(FBI)局長が上院情報特別委員会で証言を行い、ドナルド・トランプ大統領との会話を明らかにした。一方の日本では、記者会見で「公平、公正であるべき行政のあり方がゆがめられた」と述べた前川喜平・前文部科学事務次官について、野党が国会での証人喚問を求めても、与党が頑として応じない状況が続いている。

 捜査機関の権限強化があっても、情報開示がきちんと行われている社会では、人権侵害の懸念はより縮小されるだろう。今回の共謀罪論議の場合でも、政府の対応が異なれば、懸念や反対は違ったかたちになったかもしれない。

 そう考えると、国民の権利と安全・安心の強化は、必ずしも対立概念ではない。知る権利をはじめとする国民の諸権利を守りつつ、テロ対策を含め社会の安全・安心を強化していく、複眼的な議論を続けていく必要がある。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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