「北朝鮮危機の裏で儲けている人がいる」
山本氏の講演の趣旨は、次の通りだ。
「今、一部の日本人は在日コリアンをはじめとする外国人に対する寛容さが失われ、世界に顔向けできないようなヘイトや排斥が蔓延しています。満たされない感情を差別意識で解消しようという動きもあります。この国に生きづらさがあり、それが政治的に利用されつつ差別意識を助長しているのではないでしょうか。
日本人であることしか誇れないという人は、いったいどういうことなのでしょうか。それは、生活の不安定さに起因していると思います。今、日本人の貯蓄ゼロ世帯は約30%。旧民主党時代よりも悪くなっています。これが単独世帯だと、20代であれば約59%という、もっとひどい状態に追い込まれています。貧しさと背中合わせです。気合いではなんとかなりません。これでは、景気が良くなりようがないです。GDP(国内総生産)の6割が消費です。ところが、その消費するお金がないのです。
この先、さらに10%に消費税を上げていく。とんでもないことです。消費税を増税し、『その使いみちについて、信を問う』といっても、経済をわかっていない政治家のやることです。ちなみに、2014年に消費税を増税し、5兆円の新たな税収を確保しました。当初、『社会保障の安定や充実に使われる』と自民党は主張しました。実際、約5000億円は社会保障に使われましたが、残りの4.5兆円は、なんと赤字国債の穴埋めに使われました。
そして、安倍政権は3.4兆円ほど社会保障費を削減しています。私は、よく新宿で街頭演説を行います。日本はかつて戦争を起こし、残虐なことをし、敗戦に至ったことを話すと、『英霊たちを侮辱するのか』という声が必ず上がります。『ヨーロッパにおけるドイツのように、過去の反省を積み重ねてリーダーの道を選択すべきではないだろうか』と話しても、わかっていただけない方もいます。
北朝鮮問題については、対話が必要です。経済は、今や旧民主党時代よりも貧困になっている。アベノミクスで儲かっているところは大手のみ。今や内部留保は400兆円で、分配もなされていない。不満が高まっているなかで、『北朝鮮の危機が迫っている』と煽り、その矛先を北朝鮮に向けさせようとごまかしています。
今、皮肉なことに北朝鮮特需が起きています。アメリカも国防予算を上積みし、総額で77兆円になりました。ドナルド・トランプ大統領は、ツイッターでこうつぶやいています。
『私は、日本と韓国に対して、アメリカの高性能の軍事装備を大量に購入することを認めるつもりだ』
儲けたのは防衛産業です。北朝鮮危機が煽られる裏で、儲けている人がいます。日本をコントロールしているのは、政治家ではなく企業です。経団連(日本経済団体連合会)は常に国に対して提言を行っていますが、その後、政治家によって確実に履行されています。そのため、提言といっても、事実上の政治家に対する命令です。
派遣法の改正、外国人労働者の緩和、残業代ゼロ法案、消費税アップ、武器輸出、集団的自衛権などが、次々と実現の運びになっています。こうした状況を変えられるのは、選挙だけです。みなさん、よりよい政治を実現するためには、国民一人ひとりが変えていく姿勢が必要です」
(文・構成=長井雄一朗/ライター)