日本維新の会は「身を切る改革」を提案し、議員定数と給与の3割カット、公務員の人員と人件費の2割削減による捻出を主張している。
また、共産党は大企業への優遇策をやめ、株主所得への課税強化を代替案として示し、立憲民主党や社民党は逆進性による低所得や貧困層の負担増の問題を指摘している。
安倍首相は今回の総選挙の勝敗ラインを「与党で過半数」としており、もしそれを割ることになれば退陣することを匂わせており、自民党の政治的影響力は低下しレームダック(死に体)化することも考えられる。そのため、有権者は与党を選ぶか、野党を選ぶかの判断基準として、この消費税問題を重要な争点ととらえ、各党の政策をチェックする必要があるといえる。
なぜ今、消費再増税が必要なのか
ノーベル賞受賞者であるポール・クルーグマン教授の「日本経済は消費税10%で終わります」という発言は有名だが、14年12月の総選挙に際し安倍首相が参考にした意見だといわれている。同年の総選挙では、集団的自衛権に関する閣議決定(同年7月)に対して大きな批判があったが、年末の突然の解散総選挙は今回同様「大義なき解散」との批判を浴びた。しかし安倍首相は、消費税10%への増税を「延期する」ことを前面に掲げ、自民党は圧勝した。
総選挙公示直前の同年11月6日、安倍首相はクルーグマン教授を首相官邸に招き、意見交換している。そこで同教授は消費再増税延期を主張し、その必要性を説いたとされる。同教授は「週刊現代」(講談社/2014年9月13日号)」のインタビューで、アベノミクスの金融・財政政策を評価しつつも、消費税を5%から8%アップした点を間違いだったと指摘し、次のように語っている。
「いま日本では消費税をさらに10%に上げるような話が議論されています。そんなものは当然やるべきでない政策です。もし安倍政権がゴーサインを出せば、これまでやってきたすべての努力が水泡に帰するでしょう。日本の経済はデフレ不況に逆戻りし、そこから再び浮上するのはほとんど不可能なほどの惨状となるのです」(同誌より)
安倍首相はこのクルーグマン教授の忠告に従い、17年に予定していた消費税の10%への増税を19年10月に延期した。しかし、今、10%への増税を掲げている。どのような状況変化があって今回は実施することになったのかについて、選挙戦中も説明はなされていない。もし9月28日から予定されていた臨時国会が開かれていれば、以下の点が論議されたはずである。
(1)消費増税実施条件であった「不況からの脱却」が、確認できる状況になったのか。
(2)もし消費増税すれば、低所得層や貧困層に大きな打撃となり、消費動向を悪化させることにならないか。
(3)教育手当が必要である低所得者層に手当てするために、その財源を逆進性の強い消費税で確保するというのは、政策の上で整合性が取れるのか。