9月29日、東京都知事で希望の党代表の小池百合子氏は、いつものように定例会見に臨んでいた。前日には民進党の両院議員総会が開かれ、民進党の前衆議院議員全員が希望の党公認で衆議院議員選挙に出馬することが決定したばかりであった。
しかし、民進党の前原誠司代表(当時)は、「全員で希望の党に行く。排除されることはない」と語ったものの、それは小池氏が確約したことではなかった。「小池氏と前原氏の発言には食い違いがある」と感じて、会見で小池氏に質問を投げかけ、「排除します」と言わせたのがジャーナリストの横田一氏だ。
周知の通り、これを機に希望の党は失速、当初の期待とは裏腹に政権交代どころか野党第一党にすら届かなかった。この背景には、何があったのか。また、先の衆院選をどう総括するのか。横田氏に話を聞いた。
「“排除発言”を聞いて心底あきれた」
――「(横田氏が)排除発言を引き出した」と報じるメディアもあるなど、選挙後も大きな反響を呼んでいます。今でも、小池代表は「排除発言」を悔やんでいるのではないでしょうか。
横田一氏(以下、横田) もともと、小池代表は「排除」という明確な言葉こそ使っていませんでしたが、それに近い言い方をしており、私は「民進党前議員を全員受け入れるつもりはないだろう」と考えていました。
一方、前原氏は28日の両院議員総会で「排除されない」と言っており、両代表の発言に明らかに食い違いがあり、そこに大きな違和感を抱きました。そこで、私と小池氏との次のようなやりとりが生まれたのです。
「前原代表が昨日(28日)発言した『(希望の党に)公認申請をすれば、排除されない』ということについて。小池知事・代表は、安保・改憲で一致する人のみを公認すると。前原代表を騙したのでしょうか。共謀して『リベラル派大量虐殺、公認拒否』(を企てた)とも言われているのですが」(横田氏)
「前原代表がどういう発言をしたのか、承知をいたしていませんが、『排除されない』ということはございませんで、排除いたします。取捨(選択)というか、絞らせていただきます。それは、安全保障、そして憲法観といった根幹の部分で一致していることが政党としての、政党を構成する構成員としての必要最低限のことではないかと思っておりますので、それまでの考えであったり、そういったことも踏まえながら判断をしたいと思います」(小池氏)
この回答を聞いて、心底あきれました。小選挙区では1対1の構図でなければ自公に勝つことは難しく、安倍晋三政権を打倒することはできません。つまり、野党乱立を自ら招く、安倍政権打倒に逆行するような発言であり、本来なら「保守とリベラルの双方を包み込む政党」とする必要があったと考えています。
――小池氏の「排除発言」を引き出したことについては、「歴史を変えた」という見方もありますが。
横田 私は小池氏と前原氏の意見の食い違いに疑問を持ち、その素朴な疑問をぶつけたにすぎません。確かに希望の党の失速につながりましたが、小池氏がすぐに撤回・全員公認をすれば、それで済む話でした。おごり高ぶり、油断をしたことは大きなミスです。
『検証・小池都政』 小池百合子知事は都民ファーストを旗印に、さまざまな政策課題を解決するのではと期待されて都知事選に勝利した。都知事に就任して早1年、小池都政は豊洲新市場移転か築地市場存続か、築地市場跡地のカジノを含む統合型リゾート問題、五輪関連事業など公共事業削減問題、待機児童問題などで大ナタを振るわないまま、漂流を始めている。安倍政権の政策変更を迫りながら「東京から日本(国政)を変える」という道を選ぶのか。あるいは共謀罪や原発再稼働などに曖昧な態度で、国政と都政を切り分け、橋下徹・前大阪市長が立ち上げた日本維新の会のように「政権補完勢力」として安倍政権に擦り寄るのか。本書は、小池都知事に密着取材して、小池都政を検証、報告する。