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トランプ、習近平に仏頂面…北朝鮮の核施設や金正恩「後」の体制めぐり対立か

文=宮崎正弘/評論家、ジャーナリスト

習近平を徹底的に持ち上げたトランプの思惑

 いずれにせよ、トランプ大統領は訪中で劇的な成果を得ることはできなかった。随行した商業界の代表者は中国とのビジネス拡大に忙しく、貿易交渉にのみ深い関心を示した。

 トランプ大統領は、中国を一切非難せず、「民主化」や「人権」を唱えず、習主席を「偉大な指導者」「とても相性が合う」とひたすら高く高く持ち上げた。そうすることで、中国が北朝鮮への影響力をより行使する方向に持っていきたかったのだ。具体的には、北朝鮮への石油輸出の停止、送金など銀行業務の中断、中国が受け入れている北朝鮮労働者の帰還などを習主席に要請した。

「習主席を徹底的に持ち上げ、メンツを立てて譲歩を引き出せ」と助言したのは、おそらく元国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏だろう。

 トランプ大統領は、そのために動画というツールを利用した。孫娘が中国語で歌い踊る動画を習主席に見せ、人民公会堂の晩餐会でスクリーンに映し出すという、お追従ともいえる演出まで行った。また、メラニア夫人は晩餐会に派手な刺繍の入ったチャイナドレスで登場した。

 しかし、習主席は「新しいかたちの大国関係」を演じるためにも、アメリカとの安易な妥協を拒否した。

 トランプ大統領は貿易面での膨大な対中赤字を是正するために具体策を求め、28兆円超の商談がまとまったことなどが発表されたが、どのプロジェクトも将来の青写真の提示であり、向こう10年ほどのスパンでしかない。そのため、これも“不発弾”に終わる可能性が高い。

 トランプ大統領は、昨年の大統領選挙中に「不公平な貿易で中国はアメリカ経済をレイプした」などと露骨な中国批判を展開してきたが、今回の首脳会談では「不公平が起きたのは、アメリカの制度やメカニズムにも原因がある」として、アメリカ側の貿易制度見直しを表明した。

 結局、米中の協力による軍事作戦は望み薄だ。当面、中国が北朝鮮に対して軍事的行動を取る可能性は希薄であり、アメリカも多大な犠牲を伴うことになる軍事行動は控えることになりそうだ。

 一方、「ニューヨークタイムズ」(11月9日付電子版)は違った側面を報じている。実務交渉では、通商代表部(USTR)代表のロバート・ライトハイザー氏が貿易不均衡の是正を強く要求する場面があり、未公表の実質討議ではトランプ大統領が中国に「人権」の状況改善を強く迫ったという。

 いずれにせよ、トランプ大統領は大きな不満を抱いて北京を後にした。
(文=宮崎正弘/評論家、ジャーナリスト)

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