【森友】安倍首相と財務省、国民に虚偽説明か…国有地払い下げ「不当」と国が認定
以上からは、国交省による計算間違いだけでなく、3メートル以深に埋設ごみがあるとした想定自体が否定される。
報告書の内容と森友問題の本丸の扉
上記経過のなかで、11月22日に提出された会計検査院の報告書には、豊中市が土地を購入した経過やその金額、国交省の計算間違い、ごみの混入率の根拠がないことについても掲載され、「値引きの根拠が十分に説明されていない」としている。10月26日に報道された「最大でも6億円」という内容からは大きく進展し、値引きに根拠がない不適切な払い下げだとしている。
安倍首相による縁故者への便宜供与が、国家の私物化に当たると批判し続けた国民の声が、今回の検査結果をもたらしたことは間違いないであろう。隣接地の売却価格と10倍もの開きがあるにもかかわらず、関与していた官僚の誰もがチェックすることなく、国家の所有財産を払い下げ、国家財政に損害を与えていた財産管理の実態にもメスを入れることになる。
国家財政に大きな損失を与える払い下げに関与した財務省、国交省の担当者は、国家公務員法や財政法違反が問われるべきであり、ミスで払い下げ金額を間違ったというレベルの問題ではない。複数の官僚たちによる関与が明らかとなった疑獄事件といえる。与野党問わず実態の解明に後ろ向きになることは許されない。
さらに、安倍昭恵氏は「籠池氏に騙された」ではすまされない。安倍首相自身が「ごみがあったのだから値引きは当然」「適正に処理されている」と繰り返してきた。福山議員の言うように、この事件に特化した特別委員会を国会に設け、外部の専門家が参加した調査委員会の立ち上げも必要になろう。首相による犯罪の疑いに背を向けていては、民主国家たりえない。
会計検査院の報告にこの産廃マニフェストの記載がない点については疑問が残る。その点を除いた今回の報告だけでも、国の担当者に背任の疑いがあることが判明した。いよいよ、森友問題の本丸の扉が開かれたといえ、今後の動きに注目していきたい。
なお藤原工業は、森友学園から校舎建設の依頼を15年12月に受け、16年初頭から工事に入った。同年3月11日に深部からごみが見つかったとし、財務省近畿財務局と国交省大阪航空局は校舎建設の基礎杭や周辺整備のためにそれぞれ「9.9メートル」「3.8メートル」掘削する必要があると認め、掘削して土壌を取り除けば約2万トンの埋設ごみが出ると推定した。
すでに基礎杭工事と周辺整備工事は終了しており、掘削された土壌と埋設ごみは廃棄されている。したがって、もし国が言うように2万トンの産廃ごみが埋設されていれば、産廃マニフェストにその2万トンが記載されているはずである。ところが、前述のとおり埋設ごみは「ゼロ」と産廃マニフェストで報告されている。この点についても国会での審議の中で明らかにされることが期待される。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)