文氏は10日の年頭記者会見で「トランプ大統領が南北対話の実現に果たした功績は大きい、感謝を申し上げたい。これはアメリカ主導の制裁と圧力の成果だろう」とトランプ氏を持ち上げるような言葉を並べ立てた。在京の外交筋はこう語る。
「もうここまでくれば、完全な出来レースであり、茶番劇以外の何ものでもない。韓国と北朝鮮が気脈を通じて、韓国と米国が裏でつながっているとしか言いようがない。このシナリオを書いたのは米国に違いない。なぜならば、南北対話による関係改善が実現すれば、朝鮮半島情勢は平和ムードが高まり、米軍の出番はなくなるからだ。つまり、米政府は米国人の血を流さず、軍事費の使わずにすむというわけだ」
さらに、同筋は「もう一言付け加えれば、トランプ氏は日本を煽るだけ煽って、高価な米国製の武器を売りつけており、それだけでも米国は大儲けする。ビジネスマンのトランプ氏が考えそうなことだ」と指摘する。
実際、トランプ氏は10日、再び文氏との電話会談を行い、「最大限の圧力を継続する」と述べながらも、「南北対話中はいかなる軍事行動もない」と言明。さらに米紙ウォールストリート・ジャーナルとの単独会見で、「私は恐らく金正恩氏と非常に良い関係を築いている」と述べたうえで、「私は人々と関係を築いている。みんなが驚くと思う」と強調するなど、朝鮮半島情勢は米政府の都合の良いように変化しつつあることを確信しているようだ。
サプライズ訪朝
これに慌てているのが、トランプ氏とは「肝胆相照らす仲」であり、「これまでの日米首脳のなかでも最も良好な関係」と自負している安倍首相だろう。日本経済新聞によると、外務省幹部は「対話がそんなにうまくいくはずがない。緊張緩和が進んでいるとは思わない」と述べており、韓国と北朝鮮および米朝の関係改善機運については疑心暗鬼であり、その発言の裏には、「むしろ日本としては、うまくいかないでほしいと願っている」との真意が隠されているように思える。
しかし、仮に文氏の思惑通りに朝鮮半島情勢が良い方向に変わることになれば、安倍首相はそれを逆手にとって、拉致被害者救出のために電撃訪朝が現実味を帯びてくるのは間違いない。なぜならば、「安倍首相はこれまで何度も訪朝を考えていたが、金委員長の強硬姿勢のままでは訪朝しても具体的な成果を得ることはできないと考えていたからだ」と前出の外交筋は指摘する。