――「元親分」を小学校が来賓として招待するのは、かなりめずらしいですね。信頼関係があってこそですよね。
竹垣 そうなんです。ありがたいことです。
――五仁會には元やくざの方もいらっしゃいます。
竹垣 私が引退するときに一緒についてきてくれて、やくざをやめた者も多いです。今は任俠道を貫くのはホンマに難しい。何をするにもカネがかかります。私の親分のひとりである中野会長は「任俠やなくて“金狂道”や」といつも言っていましたが、その通りですよ。
昔のやくざは、「困った人がおったら助けたらなあかん」と考えていました。もし、竹中四代目が就任から200日ちょっとで殺されなければ、山口組は今も任俠道をまっとうできていたかもしれません。
今の山口組組員には、田岡三代目が遺した「山口組綱領」をきちんと読み直して、天下国家と弱者救済について考えてほしいですね。
一、内を固むるに和親合一を最も尊ぶ
一、外に接するに愛念を持し信義を重んず
一、長幼の序を弁え、礼に依って終始す
一、世に処するに己の節を守り譏(そしり)を招かず
一、先人の経験を聞き、人格の向上をはかる
この綱領は、今でも寄り合い(定例会など)では唱和していると思います。でも、実践していない。それでは意味がないんですよ。
六代目山口組も神戸山口組も任侠山口組も、みんな「田岡イズムは継承する」と言っているのですから、まずは綱領の意味をきちんと考えてほしい。それができないなら、もうやくざはやめればいいじゃないですか。生活は大変でしょうが、やくざをしていても生活は大変です。カタギになって知恵を出し合えば、なんとかなると思いますよ。これからの日本は人手不足で就職もしやすくなります。一緒に考えていきましょう。
(構成=越谷慶/ジャーナリスト)
●竹垣悟(たけがき・さとる)
1951年姫路市生まれ。21歳の時に竹中正久組長(後の四代目山口組)率いる三代目山口組初代竹中組傘下の坂本会・坂本義一会長の盃を受ける。28歳で竹中組直参となり、正久組長の秘書やボディガードを務める。四代目亡き後は中野太郎会長率いる中野会、中野会長の絶縁後は初代古川組へ移籍、要職を歴任して54歳で引退。2012年に暴力団員の更生を支援するNPO法人「五仁會」を発足、代表に就任。犯罪者や非行少年の更生・矯正活動などを顕彰する「第5回作田明賞優秀賞」(2014年)受賞。
『極道ぶっちゃけ話 「三つの山口組」と私』 元山口組系組長、現NPO法人代表が語る、テレビでは絶対に言えない「あの事件」の真相。 「これぞ本物の侠(オトコ)。わし以上の“突破者”の声を聞け!」(宮崎学)