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【裁量労働データ異常】厚労省、調査自体がデタラメの疑い…安倍首相、答弁根拠に利用

文=深笛義也/ライター
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 今回の改正は「定額働かせ放題」法案とも呼ばれているが、それは大きな誤解ということだろうか。

裁量労働が無制限に広がると、社員の時間管理ができなくなるので、経営者も嫌でしょう。定時の出勤・出社時間がなくなれば、下手すれば社員にずっと遊ばれてしまうかもしれませんので。直行直帰の営業担当者が対象になるかもしれないというレベルの話。つまり、フリーにしておいても自分で仕事をコントロールして成果を挙げてくれる者にしか、裁量労働制なんか怖くて適用できない。もちろん、タイムカードを押させて時間管理してるのに『あなた裁量労働だから』と言って残業代を払っていない会社もあるでしょう。それは労基法違反なので、労基署に通告して摘発してもらえばいいんです。そうした実態と、法律の話は別。法律に基づいた裁量労働は悪くないということです」(同)

デタラメな原理の調査

 おかしなデータが次々と出てくるために政府の分は悪くなっているが、どうしてこのようなことになってしまったのだろう。高橋氏は、元財務官僚である。

「キャリア官僚は、労働基準法の適用外なので残業の概念を持っていないんです。出勤時間は9時半と決まっていますが、夜はどこまで仕事かわからない。『酒を飲むのも仕事のうち』と先輩は言っていました。直行直帰も多い。なので裁量労働の人が自分の労働時間を知っているはずないということは、わかるはずなんですよ。問題になっている調査は、旧民主党(現民進党)政権の時に計画されたもので、民主党から言われてやったのではないでしょうか。官僚が自らやるとは思えません。原理的によくわからない調査をしても、時間とお金の無駄です。デタラメな原理の調査なので、答えるほうもデタラメになっていたのでしょう」

 安倍首相は1月29日の衆院予算委員会で、データの間違いに気づかぬまま、「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」と答弁した。

「時間で計れない労働だから裁量労働なので、厚労省の調査からして無理筋ですし、それで『労働時間が短い』などと答弁していたので、すごい変だと思いました。労働時間が長い短いの議論ではないし、調査がデタラメだということは、普通の人が考えたらすぐにわかると思います。だからすぐ撤回したでしょう。旧民主党政権の時だったら、『調査が間違っていました』『プランニングの段階から問題がありました』と言えるかもしれない。でも、今それを言ったら挑発になってよけいに国会が紛糾してしまうので、静かに野党の攻撃を受けて立っているんでしょう」
 
 一連の事態を受け、2月28日、安倍首相は働き方改革法案から裁量労働制に関する部分をすべて削除するよう指示した。安倍首相のオウンゴールで野党が見せ場を与えられたかたちだが、本質からかけ離れた議論に国会審議は費やされた。
(文=深笛義也/ライター)

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