東京医大は法律的には悪くない?
では、今回の私立大学である東京医科大のように、「女子受験者の得点を一律に減点し、女子の合格者数を抑え」ること、すなわち「男子を優遇し、女子を冷遇すること」は憲法第14条に違反しないまでも、何か問題になるのか? というと、正直なところ、マスコミが騒ぐほど大した問題ではないと考えています(山岸純個人としての意見であり、所属事務所、弁護士としての職業等は関係ありません。“炎上”した時のための言い訳です)。
なぜなら、ウチの大学に誰を入学させようか、誰を入試で優遇しようか、というのはその大学が勝手に決めるべきことであり、とやかく叩かれることではないと考えるからです。
例えば、ほとんどの私立大学では「入学金」のほかに「寄付金」があると思いますが、「寄付金」の支払期限は合格発表の前ではありませんか? 大学は「義務教育ではなく勉強したい者が行くところ」という性格がありますが、大学側からすれば「高校を卒業した人に全員来てほしいというわけではなく、大学が『こういう人を育てたい』『こういう人に育ってほしい』と思っている者に来てほしい」というのが理想です。
そうであれば、極端な話、「ウチの大学は、教材にとてもたくさんお金がかかるので、最後まで授業についてこれるように、寄付金をたくさん払えるようなお金持ちの家のご子息だけに来てほしい」という目的をもって「寄付金」を多く支払った受験生を優先する、というのも十分に許されるわけです。医者の世界はまったくわかりませんが、「女子は将来、医者になっても結婚や出産で現場を離れてしまうから、卒業後に附属病院へ勤務することを期待している大学としては、男子の受験生を育てたい」という目的も、法律的には許されるかもしれません。
実際、私立大学に関するどんな法律にも、「一定の目的をもって入試の点数を操作してはいけないよ」とは書いてありません。さらには、私立大学を監督する文部科学省は毎年、「大学入学者選抜実施要綱について(通知)」という御達しをもって大学受験の“あるべき姿”を通知しているのですが、平成31年度の通知にも、せいぜい「入学者選抜は、中立・公正に」という文言があるだけで、「公平」「平等」「差別なく」という話はあがっていません。
要するに、それなりに納得できるような目的があれば、私立大学の選抜方法なんて、その大学に任せておけば良いということです。
マスコミが騒いだことによりその大学に失望し、受験しようと思う女子が減って入学金や授業料が減っても、その分、男子が入学して金銭的には補填されるでしょうし、さらに、この少子化の世の中、男子も失望して全体の受験者が減っても、それはその大学が選択して招来した結果であり、自業自得という話だけです。もし経営難になれば、必然と方針も変わるでしょう。
(文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)