ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 麻原彰晃の死刑執行批判に反論  > 2ページ目
NEW

麻原彰晃の死刑執行を批判する「真相究明の会」森達也氏に、被害対策弁護団・滝本太郎氏が反論

文=深笛義也/ライター
【この記事のキーワード】, ,

麻原の訴訟能力

詳しく話を聞くべく、滝本弁護士の事務所を訪ねた。森氏は寄稿で「判決文は何度も読んでいる」と書いている。これをどう捉えるか。まずそこから滝本氏に尋ねた。

「森氏はいつもリムジン謀議のことばかり言うんです。地下鉄サリン事件の2日前の1995年3月18日、教祖専用のリムジンの中で麻原から『サリンを撒け』という指示を受けたという井上嘉浩の証言があって、井上は後でそれを否定しています。そして麻原が指示したという証言はそれだけだから、麻原が主犯だという根拠はないと森氏は言うんですね。これは、判決文を読んでないことの証拠です。

 リムジン謀議だけで共同共謀正犯は100%立証されるわけではないということは、判決は実は前提にしている。だから同じ狭いリムジンに乗っていたA元弁護士ら2人は起訴されていません。リムジン内で地下鉄サリン事件の謀議が完成しているならば、共同共謀正犯でA弁護士らも一緒に起訴されていなきゃおかしいんです。リムジン謀議だけではなく、ほかのこともすべて絡んで、麻原は主犯とされているんです。

 同じ3月18日、麻原は遠藤誠一に『ジーヴァカ、サリン造れよ』とサリン生成を指示しているんです。翌日、遠藤が『できたみたいです。ただし、まだ純粋な形ではなく混合物です』と報告すると、麻原は『ジーヴァカ、いいよそれで。それ以上やらなくていいから』と、純度30数%程度だけど、それでいいと言っているわけです。これは、麻原の直接の指示ですからね。事件当日の3月20日未明には、遠藤が持って行ったビニール袋入りのサリンの入った段ボール箱に麻原は手を触れて瞑想し、『修法』という儀式を行っているんです。森氏は、そういうことをまったく無視しているんだから、判決を読んでいないということです」(滝本氏)

 寄稿の中で森氏は、麻原の訴訟能力に関して東京高裁が判断する根拠にした西山詮医師の鑑定を、江川紹子氏が読んでいなかったと批判している。

「西山鑑定も重要な要素ではあるので、読み込むべきだろうと思います。だけど東京高裁の控訴棄却の決定文を読めば、西山鑑定だけで判断したわけではないということがわかります。そこには、一審の裁判経過、一審の麻原の罪状認否や不規則発言、めちゃくちゃな英語で喋り続けたり、日本は滅びてしまって自分は今エンタープライズの上にいるというようなことを喋ったことなど、一連の経過を見て分析しているわけです。西山鑑定だけによっているわけではありません。一審弁護団は訴訟能力がないなんて全く主張しなかったんですが、これも高裁判決で指摘されています」(同)

麻原は詐病か

 当時、問題になっていたのは訴訟能力だが、死刑においては受刑能力が問題になる。能力がなければ、執行はできない。

 高裁の決定がされた2006年当時の麻原は、紙おむつに排泄し、衣服の着脱は係官が手伝い、風呂には介添えで入り下半身は自分で洗い、面会時には面会人のいる前でマスターベーションをするという状態だった。高裁の決定を要約すると、拘禁反応はあるが訴訟能力はあるとするものだ。

「まず、ある程度の精神疾患があっても、訴訟能力は認められます。たとえば、統合失調症の患者さんを何人も知っていますが、まったく判断能力がないというわけではないですから。ただ、麻原の場合は、詐病だと思っています。失禁とマスターベーション、すごいですよね。だけど『オウム裁判傍笑記』(新潮社)を書いた青沼陽一郎さんの言葉を借りれば、麻原は『最終解脱者』ならぬ『最終芸達者』ですから、あのくらいのことはするでしょう。元幹部らもそう言っていましたし、ずっと見てきた私もそう思います。おむつの中にウンチは私もしたことがあるんです。全身麻酔して目覚めたらしていました。なんかヌルッっとしたが気持ちよかった。その程度のことです。

 麻原はウンチを壁になすりつけることまではしていません。「弄便行動」と言いましてね、便に関して症状が出るならそこまでします。麻原はウンチを手に取ってはいないんです。面会を拒否するようになっても、お風呂や運動の時などは抵抗なく行っていたし、ごはんもこぼさずに全部食べていたんです。十何年も狂ったフリをできるというのは怪物ですと森氏は記者会見で言っていたけど、麻原はそのくらいの怪物ではありますよ。
便で思い出せば、麻原が絶対者だった時のエピソードがあります。人間が糞便製造機であることを示すため、女性信者にウンチさせて、その場で男性信者に食べさせるなんてことをやっていたんです。その男性は今もアレフにいます。

 本当に詐病だったんだと、今確信しますね。執行の前、抵抗なく静かだったということは、私も直接聞きました。遺骨を四女に託すと意思表示したというのも確かだと思います。7月6日、その日から私は受け取り方を確認しているわけですから。松本智津夫として死にたかったんだろうな、と思います」(同)

麻原彰晃の死刑執行を批判する「真相究明の会」森達也氏に、被害対策弁護団・滝本太郎氏が反論のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!