(1)玉城デニー氏の大勝はなぜ起こったか、「弔い合戦」と公明党の瓦解
9月30日に投開票された沖縄県知事選で、前自由党衆院議員の玉城デニー氏(58)が、自公が全面支援した前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)ら3氏を破り、初当選を果たした。得票数は玉城氏が39万6632票だったのに対し、佐喜真氏は31万6458票。前々回(2010年)の知事選では仲井真元知事が33万票、前回(14年)は翁長前知事が36万票だったことを考えると、玉城氏の圧勝だったことがわかる。
この大勝は必ずしも予想されたものでない。一時期、沖縄の新聞「沖縄タイムス」の有力者が、「この選挙は玉城デニー氏が負ける。問題はどれくらい差が開くかだ」と内話していたほどであり、佐喜真氏の陣営のムードも「追いつける」という楽観ムードが濃厚だった。
一般的に沖縄の勢力図は、自公50%、野党共闘30%、浮動票20%といわれている。このようななかで、多くの選挙戦は、米軍基地問題が沖縄県民の重大関心となる際には野党側が勝ち、基地問題の関心が薄れた時には自公側が勝つというパターンが続いている。翁長前知事を支える「オール沖縄」は2017年1~4月に宮古、浦添、うるまの市長選3連戦で全敗し、本年2月に行われた名護市長選挙では基地移転がさしたる争点にならず、3期目を目指した稲嶺進氏が自民、公明推薦の渡具知武豊氏(56)に敗れた。こうした流れは本年11月に行われる予定だった知事選挙でも継続すると予想された。
こうした状況下で、翁長前知事が亡くなられた。ここから今回の知事選挙では新たな流れが出た。「故翁長知事の遺志を継ぎ、辺野古の新基地建設を阻止する」という要素が出てきたのだ。
告示前の段階では、自民党の調査で、玉城氏が佐喜真氏を10ポイント以上リードしていると伝えられた。政府与党にとって今回の知事選は、安倍首相が9月20日の自民党総裁選で3選してから最初の大型選挙であることに加え、米軍普天間基地の辺野古移設埋め立てを進めるためには、何がなんでも負けられなかった。
負ける可能性のある選挙応援はしない安倍晋三首相は別として、菅義偉官房長官は3回、小泉進次郎筆頭副幹事長(当時)も3回、二階俊博幹事長もたびたび沖縄に入りし、さらに石破茂氏や小池百合子都知事らも応援演説に立った。公明党の県本部は移設反対の立場であり、前回は自主投票となったが、今回は推薦に切り替え、佐喜真氏の全面支援に回った。自民党の世論調査では両者の差はぐんぐんつまり、逆転かとすら言われた。