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孫崎享「世界と日本の正体」

沖縄知事選で大敗の安倍政権、米国軍産複合体と強固な関係…玉城知事で基地は「現状維持」

文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

 では、なぜ玉城氏の圧勝という結果となったのか。この選挙は「翁長前知事の弔い合戦」のムードは一時薄れたが、投票日約1週間前に行われた「オール沖縄」集会で翁長前知事の妻が次のように演説し、「弔い合戦」の雰囲気が一気に拡大した。

「日本政府の方のなさることがあまりにもひどい。沖縄県民に『オールジャパン』と称して、政府の権力をすべて行使して、私たち沖縄県民をまるで愚弄するように押しつぶそうとする。なんですかこれは。(日本政府は)県民の心に1ミリも寄り添おうとしない。申し訳ないけど、私は譲りたくはありません。残り1週間です。簡単には勝てない。それでも簡単には負けない」

 もう一つの要因は、公明党の動きである。

 沖縄での公明党支持の有権者は約10万人といわれている(注:前回の衆院選で公明党が沖縄で得た比例票は約10万票あった)。期日前投票等で、本土から5000人からなる公明党支持者が送り込まれたといわれている。

 一般紙やテレビが、出口調査の結果として公明党支持者のうち約20%が玉城氏に投票したと報じたが、この程度ではない。約40%の人が玉城氏と記名したとみられる。4万票の出入りだけで、8万票の差が出る。前回の知事選挙では自主投票、それが今回は佐喜真氏推薦だから、本来は玉城氏でなく佐喜真氏に行くべきなのに、そうはならなかった。

(2)アメリカの反応

 米紙ニューヨーク・タイムズは沖縄知事選挙に異例の反応を示し、10月1日、沖縄知事選を受けて社説『沖縄においてより小さな米国足跡を目指して(Toward a Smaller American Footprint on Okinawa)』を掲載した。その主要論点は次のとおりである。

・日本の島(沖縄)の新知事は米軍に去るよう警告した。ワシントンと東京は妥協を見いだす時である。長年、日本は沖縄の人々に、人口密集地にある米国海兵隊の古い基地の代替として、海上における新基地の移転に合意するよう働きかけてきた。中央政府はディズニー施設の建設支援のようなニンジンを与えようとした。さらに基地に反対する地方政府の決定を覆すため、裁判に訴えるというムチも試みた。しかし、沖縄の人々は再三にわたり新基地は不要と答えてきた。彼らは米軍負担を相応以上に負担してきていると確信している。

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

東京大学法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。1966年外務省入省。イギリス陸軍語学学校、ロンドン大学、モスクワ大学にてロシア語を習得し、在ソビエト連邦大使館を経て、1985年在アメリカ大使館参事官(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、1986年在イラク大使館公使、1989年在カナダ大使館公使を歴任。1991年から1993年まで総合研究開発機構へ出向。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。国際情報局長時代は各国情報機関と積極的に交流。2002年より防衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。

Twitter:@magosaki_ukeru

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