しかし、ロックバンドが中心のCDJにアイドルが出演することに対して、ロックファンの間では賛否が分かれている。さまざまなロックフェスに足を運んでいるロックファンに話を聞いてみると、「目当てのバンドはもちろんだけど、普段は聴かないアーティストの音楽も楽しめるのがフェスの良いところ。アイドルのパフォーマンスも面白そうだし観てみたい」と肯定的な意見もあれば、「フェスはただでさえチケットが手に入りにくいのに、アイドルファンが押し寄せたらさらに入手困難になる。しかも、ロックフェスなんだからロックバンドが出演すべき。CDJに出たい若手バンドはたくさんいるのだから、貴重な一枠を潰さないでほしい」と否定的な意見もあるのが現状だ。
●元AKB48の前田敦子がロックフェス初出演
こうした意見も聞かれるように、ロックファンから歓迎されているとは言い切れないアイドルだが、彼ら彼女らがロックフェス出演時の会場の盛り上がり具合は、一体どうなっているのだろうか。そこで、元AKB48の前田敦子が出演したCDJ初日(12月28日)の会場の様子をリポートしてみたい。
前田がライブを行ったのは複数あるCDJの会場の中で2番目に大きい「GALAXY STAGE」で、13時からの公演。初日のトップバッターにもかかわらず、フロアの後方まで観客で埋め尽くされ、前田がステージに登場すると大歓声が沸き上がる。彼女も「こんなに早い時間から、いっぱい集まってくれて嬉しいです」と語るほど、フロアは熱気に包まれていた。観客は若干男性が多いものの、意外にも女性も数多く見受けられた。男女比としては6:4ぐらいだろう。年齢層としては、フェスの来場者は20~30代が多かった。
そして、バッグバンドとしてTHE GROOVERSの藤井一彦(ギター)、the HIATUSのウエノコウジ(ベース)、GREAT3の白根賢一(ドラム)、GRAPEVINEなどのサポートメンバー高野勲(キーボード)、そして廣野有紀(コーラス)と、かなり豪華な面々が紹介されるたびに、「おおーっ」という大きな歓声とともに会場は盛り上がっていた。やはり観客はロックファンが多かったのだろう。しかし、いざライブが始まると「敦子ー」と声援を送る者や、アイドルのライブらしくペンライトを振る者もいたので、前田敦子ファンも一定数いたようだ。
ポップな楽曲『タイムマシンなんていらない』やソロデビューシングル『Flower』などを楽しげに歌い上げ、フロアはさらにヒートアップ。そして最後に前田主演の映画『Seventh Code』の主題歌『セブンスコード』を初披露。ソロとしては彼女自身初となるロックチューンの楽曲であり、先ほどまで静かに聴いていた観客も体をノリノリで揺らす。このアップテンポのリズムはロックファンとも親和性が高かったのだろう。退場するときにはフロアには惜しみない拍手が広がり、彼女もアイドルらしく丁寧に手を振っていた。筆者の近くにいた女性客も「やっぱり生で見るとかわいいねー」と話しており、前田敦子に魅了されたロックファンも多かったようだ。
●なぜロックフェスにアイドルが出演?
前田敦子のライブは大いに盛り上がっていたが、それでもアイドルがロックフェスに出演することに対して反発する意見は多い。ネット上では「チケットを売りさばくために、アイドルの集客力を利用しているのでは?」との声もある。