しかし、2010年に開催されたCDJでは当日券も販売されていたが、アイドルが1組も出演していなかった11年からは開催前にチケットが完売している。そのころからダフ屋が横行するほどプラチナチケット化しているので、現時点では運営側もわざわざアイドルの集客力に頼る必要はないはずだ。
また、そもそもCDJに限らずロックフェスと呼ばれるイベントは、必ずしもロックバンドだけを集めているわけではない。DJやシンガーソングライターなど多彩なジャンルのアーティストも出演しており、年々そのジャンルの幅も広げている。現に今回のCDJもボカロP(音声合成ソフトのVOCALOIDで楽曲制作をする人)である八王子Pや、声優としても人気を誇る坂本真綾などが出演。アイドルブームが過熱し、音楽の一ジャンルとして受け入れられている現代では、アイドルがそこに参入してもなんらおかしい話ではない。
では、なぜフェスの運営側は出演するアーティストの幅を広げているのだろうか。
その理由の一つとして“音楽不況”が挙げられるだろう。年々CD全体の売り上げが減少しているのは周知の事実だが、アイドルがオリコンのCDシングル年間ランキングで上位を独占しているのも近年の傾向だ。もちろん、握手券などがついているCDの影響もあるだろうが、それでもアイドルファンが多いことに変わりはない。またボカロPや声優も同じく、オリコンの週間ランキングでは上位に食い込んでおり、アイドルほどではないものの一定数のファンがいることがわかる。
現状ではフェスの来場者数はおおむね良好だが、将来的に音楽不況のあおりを受けて来場者数が減少してしまうことを考慮している可能性もある。フェスの運営側は、アイドルなどをきっかけにより多くの音楽ファンが来場し、他のアーティストにも興味を持ってもらえればと、日本の音楽シーンを盛り上げようという狙いがあるのかもしれない。
つまり、ショーケース性をはらんだフェスに変貌しつつあるということだ。これこそ、アイドルがロックフェスに出演している要因なのではないだろうか。それならばかつて“AKB48の不動のセンター”といわれ、現在でも数多くのファンを持つ前田敦子が出演したことも納得できる。また、前田のバックバンドを著名なロックミュージシャンで固めたのも「ロックファンの人にも、アイドルに興味を持ってほしい」という狙いがあったのかもしれない。
だが、繰り返しになるがロックファンから反発があることも事実。はたしてロックフェスにアイドルが出演することは定着していくのだろうか。
(文=千葉雄樹/A4studio)