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放射性物質除去に使用広まるEM、科学的根拠に疑問の声続出でも、公的資金投入の恐れ?

文=六本木博之/フリーライター
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 その記事によれば、放射性物質に汚染された汚泥がEMによる発酵処理で除染できるという。また、高濃度の放射性セシウムに汚染された土壌でも、EMを散布した5カ月後にはその値が3分の1以下まで低減したというのだ。さらに高橋議員がラジオで発言したように、放射性セシウム濃度の高い土壌でも作物からは検出されないのは、EM技術でつくられた堆肥が放射性セシウムの吸収を阻害したからだと主張している。これらの現象に関して、比嘉氏は放射性物質が「消滅したとしか言えない」とも断言しているのだ。

 もし、これらが真実ならば、わざわざ表土をはぎ取って仮置き場に保管したり、中間貯蔵施設をつくる必要はなくなる。

●微生物が核エネルギーを転換することはありえない

 比嘉氏は、除染のメカニズムを「EMは放射能のような有害な波動を触媒的に無害化するか、使えるエネルギーに転換する力を持っている」と説明している。

 この説明に対して、3月に発刊された『いちから聞きたい放射線のほんとう』(菊池誠・小峰公子著/筑摩書房)の著者である菊池誠大阪大学教授は、「生物が放射性物質を無害化することはありません。『EMで放射能が消える』というのは科学的に誤りです」と指摘する。生物が利用できるのは化学反応のエネルギーであり、原子核反応のエネルギーを利用することはありえない話だという。さらに菊池教授は、比嘉氏が同記事で提示している放射性物質除去のデータに関しても疑問を投げかける。

 例えば、福島県内の牧場で、EMを使用した区画と化学肥料を使用した区画の土壌に含まれる放射性セシウム濃度を比較したデータがある。これによると、EMを使用した区画の土壌は短期間で放射性セシウムが減少しているように見える。

 ただしこれは、土壌中の放射性セシウムが雨で流されたり、地面に染み込んでいく現象(ウェザリング)として説明可能で、「半減期よりも早く自然に減るのはごく普通で、EMを使わなくても福島県内のいたるところで観察されています」(菊池教授)という。

 むしろ化学肥料を使用した区画で、放射性セシウムが周辺から流れ込んでいるのではないかと考えられる。こうしたデータを対照する際は、両者がどれだけ同じ条件下にあるかが重要になるが、この記事からだけではそこまで判断できない。

 また、高橋議員の発言にあった、放射性セシウムが土壌から農作物へ移行するのを低く抑える効果は、土壌中のカリウムによると考えられる。菊池教授は、「十分なカリウム施肥をした土壌では農作物への移行は低く抑えられます」と指摘する。

●政治家にも求められる科学リテラシー

 これは単に科学的に正しいか否かの問題ではない。以前からEMの普及活動をしてきた団体はここぞとばかり、被災地にEMによる除染を浸透させようとしている。高橋議員が関わっていたU-netでは、各地のボランティア団体の協力を得てEMを大量に培養し、配布しているという。

『いちから聞きたい放射線のほんとう: いま知っておきたい22の話』 東京電力福島第一原子力発電所事故から3年経った今こそ、落ち着いて考えるために知っておきたい22の話をやさしく解説します amazon_associate_logo.jpg

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