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また、ピケティも著書の中で、「経済成長によるトリクルダウン効果では、所得の適正な再分配は望めず、少子化や人口減少の進展で相続資産格差が拡大・固定化し、世襲資本主義が拡がる」と指摘している。
当の安倍首相は国会で「安倍政権として目指すのはトリクルダウンではなく、経済の好循環の実現であり、地方経済の底上げだ」と、批判をかわす答弁を行っている。
ピケティは著書の中で、米国型の企業トップが巨額の報酬を取ることで、富の集中が起こっている点に対しても「自分の給与を自分で決める立場の人は、自分自身に対して甘くなる、あるいは最低でも自分の限界生産性の評価が楽観的になるのはごく自然なインセンティブがあると考えるのは当然だろう」と、いささか皮肉な調子で批判している。
昨今の日本でも企業トップの報酬が高額化してはいるものの、米国と比べればまだまだ巨額というほどではない。むしろ日本では、アベノミクスがある程度の成果を表している中で、格差を表す指標であるジニ係数がOECD(経済協力開発機構)の平均を上回り、加盟34カ国中10位の格差が発生していることや、所得が真ん中の人を基準にして貧しい層の割合を示す「相対的貧困率」で加盟国中6位と貧困が進んでいることのほうが問題だ。
ピケティが日本に投げかけたものは、富の集中という格差の拡大ではなく、トリクルダウンという経済政策の名のもとで起こっている貧困の拡大という格差だったのかもしれない。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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