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米山秀隆「不動産の真実」

1千万円の「ローコスト住宅」普及か…一代で壊す前提、実家整理&空き家問題の解決にも

文=米山秀隆/住宅・土地アナリスト

 大手ハウスメーカーなどでは、長期優良住宅を建築した上、適時に点検、維持修繕を行ってその履歴を残し、所有者が売却したいとの意向を持った時、積極的に仲介し、その後のリフォーム需要を取り込むなどの動きを進めている。こうした取り組みが広がっていけば、長持ちする住宅が中古物件として流通していくと考えられる。しかし今後、建築された長期優良住宅のどれほどが中古物件として流通していくかについては、現時点ではなお未知数である。

 一方で、ローコスト住宅に対する需要は依然根強い。最近注目されているものの一つとして、株式会社クリエイト礼文(山形市)が供給する「ユニテハウス」がある。四角い箱型の家(ツーバイフォー工法、2階建て4LDKが標準)であるが、デザイン性が高く、本体価格が1,100万円と安いことが消費者に受け入れられている。供給する側にとっては、同じ形であるため資材費を安く抑えることができ、また、組み立ても容易で通常2週間程度の作業が2日程度で済むため、人件費も抑制できる。全国にフランチャイズ展開しており、年間900棟あまりの現在の実績を、将来的に5,000棟までに増やす計画である。

 ローコスト住宅は一般に、何世代かにわたって使うことを目指すというよりは、一代限りでも良いとする考えで取得する場合が多いと思われる。長持ちする住宅を建て、それを次の世代が中古住宅として使い続けることで、空き家発生を抑制するという考え方とは相いれないものであるが、この路線を突き詰めていくともう一つの空き家を増えにくくする方向性が浮かび上がる。

解体やリサイクルのしやすさを予め考えるという発想

 それは、建築する時点で、予め将来の解体のしやすさを考慮しておくというものである。一代限りの使用と割り切り、必要な機能は確保しつつも、簡素な造りにしておくことがこれに当たる。こうした考え方に基づいた住宅は、実際に供給されたことがある。かつての江戸の住宅で、江戸ではしばしば大火に見舞われたため、火災によって消失する可能性を考慮し、建築時にお金はかけず、また、時に延焼防止のために取り壊される可能性を考え、壊しやすい構造になっていた。

 欧米型モデルの普及に一定の限界があるとすれば、一代限りで壊す前提の住宅供給モデルがあってもいいのではないか。さらに現代においては、使用が終わった後の資材のリサイクルのしやすさも予め考えておけばなおよい。将来の解体やリサイクルのしやすさを考慮したローコスト住宅が市場に登場すれば、受け入れられる余地はあると思われる。

 現在、住宅を持ったことの末路として、子どもも引き継がず売るに売れない住宅を抱え、そればかりか危険な状態になった場合の責任を問われる時代となり、本当に所有したことが良かったのかと自問せざるを得ないような状況も生じている。持つとしても一代限りの使用で、最後は解体やリサイクルがしやすくなっている住宅は、こうした問題への答えの一つになるものである。今後の住宅供給業者の取り組みを期待したい。

(文=米山秀隆/住宅・土地アナリスト) 

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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