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ロスチャイルドが世界支配?経済危機の元凶は?陰謀論を真面目に検証してみた

構成=編集部
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「ワーテルローの戦いで大儲け」伝説の真相

–調査の結果、何がわかったのでしょうか。

野口 この伝説は、3点に分けて調べる必要があります。第一に、戦争の結果がロスチャイルド家にもたらした影響です。ハーバード大学教授で経済史が専門のニーアル・ファーガソンは、ロスチャイルド家は連合軍の勝利で「大儲けをするどころか、もう少しで破産するところだった」と指摘し、「彼らの財産は、ワーテルローの戦いによってではなく、この戦いがあったにもかかわらず築かれた、というほうが正しい」と述べています。これがどういう意味なのかは、本書をご覧ください。

 第二は、ナポレオン敗北の情報をネイサンが英国政府に対して隠蔽したのかどうかという点です。実際には、ネイサンは手に入れた情報を直ちに政府に伝えたのですが、「公式情報に反する」として、信じてもらえませんでした。

 第三は、ネイサンがたった1日の債券取引で莫大な利益を稼いだのかどうかという点です。ネイサンは、独り占めした情報によるインサイダー取引まがいの短期売買で儲けたのではありません。終戦が英国の財政と経済に及ぼす影響を分析し、その読みに基づき、周囲の意見に逆らって英国債を辛抱強く保有し続け、17年の末に債券市場が40%余り値上がりした時点で手放した。つまり、長期の投資で利益を得たのです。

 疑似科学や陰謀論を批判するライターのブライアン・ダニングは、ウェブサイト「スケプトイド」で、「ロスチャイルドがワーテルローの戦いで大儲けしたという歴史的記録は、1940年の反ユダヤ的ドイツ映画『ロスチャイルド家』まで存在しない」と述べています。

ロスチャイルドが中央銀行を支配することはできない

–ロスチャイルド伝説の検証は、これだけではなく、ネイサンの父であるマイアー・アムシェル・ロートシルトの「英国の通貨供給を管理する者が大英帝国を支配する。そして、私は英国の通貨供給を管理している」発言や、「ロスチャイルド一族が米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)を支配している」説などの真偽にも迫っています。

 特に、後者については、ベストセラー陰謀論本が記す、ニューヨーク連邦準備銀行設立時の株主の誤りを指摘した上で、こう述べています。「連銀の株主が民間銀行であるというのは事実である。しかし、民間企業の場合と異なり、ロスチャイルド財閥など外国の銀行が株式を大量に取得し、それによって連銀を支配することは制度上できない」【註:本書では、米国の中央銀行組織を示す言葉として、理由を述べた上で、連邦準備制度理事会(FRB)や連邦準備制度ではなく、連邦準備銀行(連銀)を使っている】

野口 もちろん、連銀が民間銀行からの政治的圧力と無縁というわけではありません。むしろ、第5章「中央銀行と通貨発行権問題の正体」で明らかにしたように、連銀は発足当初から現在に至るまで、米国内の民間銀行から強い影響力を受けてきました。しかし、それを欧州のロスチャイルド家と結びつけるのは、明らかに飛躍しています。

『世界金融本当の正体』 金融危機の原因はロスチャイルドでも資本主義の暴走でもない。政府と中央銀行の通貨発行権問題を明らかにする! 金融支配の法則がわかる決定版! amazon_associate_logo.jpg

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