昨年は欠陥マンション問題がメディアを賑わせた。横浜市で大手企業によって過去に分譲されたマンションが2物件、杭が支持基盤に達していないことが判明し、ともに全棟建替えの方向で手続きが進んでいる。
その内の1物件では、杭を打ち込んだ時のデータが偽造されていた。その後の調査で、偽造を行った社員はほかの多くの杭工事を担当していた。そして、同様の偽造が行われていた。さらにいえば、杭工事を行っているほかの会社でもそういった偽造が行われていたことが判明。つまり、あの横浜のマンションのように建物が傾く可能性がある建造物が、日本中にあるらしきことが推測された。
さて、この事件は今どうなっているのか。実のところ、騒ぎは収まった。うやむやといえば、うやむやにされている。
そもそも、監督官庁である国土交通省は、こういった欠陥建築の事件で世間が騒ぐことを好まない。性能用件が国交省の基準に達していなかった六会コンクリート事件でも、免震性能のデータに偽造があった東洋ゴム事件でも、国交省の動きは同じ。「不正はあったが現況の建物の耐震性が心配するほど劣っていることはない」という見解を出して、ひたすら火消しに回るのだ。こういった国交省のいつもながらの動きは、消費者側の利益を優先しているとは思えない。
欠陥のないマンションは「ない」
マンションは、1棟としてまったく同じものはない。住戸ごとにも微妙な差がある。なぜなら、すべてが手づくりだからだ。さらにいえば、完成度が100%でまったく欠陥のないマンションもあり得ない。なぜなら、人間は一定割合で必ずミスをするからだ。
マンションは数十戸規模の比較的小さな物件でも、その建築作業を細かく分けると何千もの工程がある。また、1住戸をつくり上げるのに何百人という職人が関わっている。そのすべてで完璧な作業が行われる、ということは奇跡に近いはずだ。
当然、いろんな過程でさまざまなミスやずさんな作業が行われている、と考えるべきだ。
わかりやすいところでは、外壁のタイルを雑に張っていた場合は数年で剥落が始まる。杜撰なコンクリートの打設を行っていれば、雨漏りの原因となる。そうでなくてもタワーマンションの外壁に使われているALC(軽量気泡コンクリート)パネル接合部は超高層ならではの建物の揺れで劣化しやすい。工事精度が甘いと竣工後数年で雨漏りが始まる場合がある。