こういった細かな欠陥は、補修工事をすればなんとか取り繕うことができる。しかし、昨年発覚した杭の未達のような根本的な欠陥は、建て直すのがもっともスッキリした解決法であろう。
あの横浜の2つのマンションは、動かしがたい証拠があったために、売主企業は最終的に責任を認めて建て直しの方針を表明している。しかし、ああいったケースは稀だといっていい。
実のところ、なんらかの欠陥が見つかった大半の新築マンションでは、売主が素直に責任を認めない。あの横浜の2つのマンションでさえ、売主側は当初「それは東日本大震災の影響」とか「自然な劣化によるもの」などと、責任逃れに終始していたという。一方のマンションではそういった話し合いが10年近くも行われた。そして幸いにも動かぬ証拠が見つかったのだ。もし、そういった証拠が出てこなければ、売主側は今でも言い逃れを続けていたかもしれない。
たとえ売主が名の知れた一流企業であっても、潔く責任を認めることはない。
言い逃れと「決めゼリフ」
新築マンションの引き渡し後に、なんらかの欠陥や不具合が見つかったとする。それが共用部分であれば、話し合いの当事者は管理組合と売主である。
ところがたいていの場合、管理組合はまず管理会社にクレームをつける。管理会社は売主企業の子会社であることがほとんどだ。また、日頃から管理組合と連絡を取り合っている管理会社のフロント(担当社員)には、何事も話しやすい。「それでは、売主の担当者に伝えておきます」となる。
そして数日後か数週間後、売主企業のアフターサービス担当者と施工したゼネコンのクレーム処理係が現場を確認しにやってくる。誰が見ても明らかな施工不良でもない限り、売主もゼネコンも簡単には責任を認めない。不具合があって売主を呼んでいるわけであるから、管理組合側は苛立つ。
その内、ゼネコン側から改良工事の見積もりが出される。「無償で補修してください」と管理組合が要求しても「これは施工不良ではなく自然な劣化です」とか「使用方法を誤っているから起きたのです」といった言い逃れをする。
話し合いは続くが、一向に埒が明かない。苛立った管理組合側は建築士や弁護士に相談する。しかし、仮に裁判になったとしても管理組合側が明らかな施工不良を証明できない限り、有利な判決は期待できない。