マイホーム建設で私が味わった地獄…要望を業者が何度も無視して工事、業者が突然倒産
ただ、資金繰りが厳しいかどうかは、外からは簡単にはわかりません。たとえば契約や入金をせかす業者は危ないなどといわれますが、末端の従業員には倒産は最後まで知らされないものです。業者の評判はネットで検索することもできますが、元従業員や同業者の嫌がらせの書き込みもあるので、あくまで参考程度でしょう。
それよりも担当者の当たりはずれのほうが影響は大きい、というのが私の実感です。そして、打ち合わせ内容は毎回必ず書面で残し、双方のサインをして証拠を残しておくことです。私の場合も、「あれ、ここはこうしてと伝えたはずなのに」「見積もりに入っている設備と違う」ということがよくあり、これも完成後にモメる一因となりました。
また、モデルハウス以外に実際に建てた家を見せてもらう、業者が主催する見学ツアーに参加するとかで、自分の目で確認できる方法もあります。幸い地元には、その工務店が建てた家のリアルなサンプルがたくさんありますから、可能であればそこに住んでいる人たちにも聞いておきたいものです。
工務店の倒産リスクを低くするには、建築代金を一括先払いしないことです。これはもちろん一般的なことで、通常は完成度に応じて何度かに分割して払います。しかし私の場合、完成度ではなく、単に業者が指定した分割スケジュールで支払っていました。そのスケジュールで銀行からの融資承認を得ていることもあり、何の疑問も持たなかったのです。
そのため自分が払い込んだ建築資金は業者の運転資金に消え、残代金だけではとても完成には足りないという状況だったようです。
もし今回が完全な倒産で、工事を別の業者に引き継いでもらったとしたら(そもそも引き受けてくれる業者が見つかる可能性も低い)、予定よりも1,500万円ほど追加でかかっていたことになります。この額の資金調達ができなければ完成させられずアウトです。そういう意味では、いろいろ悶着はあったものの、不幸中の幸いだったというわけです。
大手を利用するメリット
反対に大手ハウスメーカーは、中小零細企業よりもこうした倒産リスクが小さく、長くアフターサービスを受けられるという安心感があります。どんなに保障が充実していても、会社がなくなってしまえば意味がありませんから。
私の場合も、当該の工務店はいまだ再建途上でバタバタしているようで、問い合わせしても反応がない、あっても非常に遅く、おそらくアフターサービスは望めないと半分諦めています。ただしアフターサービスの対応については、業者というよりも担当者個人の問題のほうが大きいかもしれません。
もちろん、横浜の傾斜マンション問題のように、必ずしも大手なら安心だと断言できるわけではありません。しかしそれでも、この事件では慰謝料が一戸当たり300万円、仮住まい費用の全額負担、全棟建て替えで新築に入居できるなど、破格の条件が出せたのは、やはり大手だからこそでしょう。報道によると、総額300億円以上かかるそうです。
これはレアケースかもしれませんが、中小にはそんな負担に耐えられるはずもなく、問題が起きた場合の多くは、購入者の泣き寝入りが多いようです。零細企業なら会社をたたんで逃げることもあり得ますが、上場大手はそう簡単に逃げることはできません。その分の安心料が上乗せされているという見方になるでしょうか。
どちらを取るか判断は難しいですが、私の経験が少しでも参考になれば幸いです。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)