大規模修繕
ところが、ほとんどの日本人はタワーマンションに対する嫌悪感を抱かない。むしろカッコイイくらいに考える人が多数派だろう。それが証拠に、タワーマンションはよく売れてきた。また、周辺の普通のマンションよりも価格が多少高くて当たり前、という受け止められ方をしている。実際、市場での価格形成もその原則に従っている。
分譲型タワーマンションの供給が急に増えだしたのは2000年頃からだ。それ以来、ブームが続いているといっていい。そして、ブーム初期の頃のタワーマンションがそろそろ大規模修繕の適齢期に入る。
タワーマンションの大規模修繕というのは傍から見ていると、いろいろな面でかなり危なっかしい。
まず、工法。普通のマンションなら足場を組んで外壁の修繕工事をする。ところが、足場というのはせいぜい14階までしか組めない。それ以上の階の外壁はどうやって修繕するのか。現状では屋上からゴンドラを吊るすやり方と、柱を立てて移動式昇降足場を設ける手法があるとされる。どちらも足場を組んだ場合に比べてひどく作業効率が悪い。強風などの危険性もある。1階分の作業を行うのに約1カ月程度を要するとされる。
そもそもタワーマンションの建設自体はプレキャストの建材を組み合わせていくだけなので、1カ月で2階分は出来上がっていくという。修繕するための時間が建設の2倍もかかること自体、まだまだタワーマンションの修繕方法が確立していない証拠。それだけ未完成に近い集合住宅の形態といえるのではないか。
隠される雨漏りの実態
タワーマンションの外壁材はほとんどがALC(軽量気泡コンクリート)パネルである。それをサッシュや窓枠などと組み合わせて外壁を組み立てていく。各建材の間にはコーキング剤が充填される。このコーキング剤は一定年数を経過すると必ず劣化するとされている。特に潮風にさらされる湾岸のタワーマンションでは、内陸よりも劣化が早いと想定されている。
コーキング剤が劣化すると、そこから雨水が浸透して雨漏りの原因になる。雨漏りをしているマンションは立派な欠陥マンションである。それが世間に知れると資産価値に悪い影響が生じる。だから、管理組合もあまり騒がない。タワーマンションには高層階の雨漏りが多いとされるが、メディアなどではあまり取り上げられないのは、管理組合に資産防衛の意識が働くからだ。