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深野康彦「あなたと家族と日本のための、お金の話」

投資信託の手数料、揺らぐ金額の妥当性

文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

金融庁の“かけ声倒れ”

金融庁は、これまで投資に踏み出せなかった理由のひとつである「商品が多くて選べない」という声を反映して、つみたてNISAでは商品数を絞って選びやすくしたようです。実際、筆者が金融庁にヒアリングで呼ばれた時にも同様のことを統括官から言われました。しかし、駆け込みの新規設定商品も対象としたことから、同じ運用会社で同じ株価指数に連動する商品が複数本存在するのです。これではいたずらに商品数を増やしただけで「商品数を絞って選びやすくした」は、単なるかけ声倒れといえます。

 百歩譲って新規設定はまだ許せるとして、手数料等を引き下げた投資信託、なかでも運用管理費用を引き下げた3本は、投資家に手数料引き下げを行った理由について説明責任があります。つみたてNISAが始まる前と始まった後の運用管理費用の違いの理由は何かという点です。

 たとえば、純資産総額が大きくなった末の引き下げなら、ボリュームディスカウントというロジックが成り立ちますが、ただ単につみたてNISAの対象商品に認められるために運用管理費用を引き下げたのならば、引き下げ前の手数料率はいったいなんだったのか。本来徴収すべき運用管理費用よりも高い費用を投資家に負担させていたのではないか、と勘ぐりたくなるのです。

 運用管理費用が低くなったことは朗報であることは事実ですが、つみたてNISA開始の前と後の費用の違いの理由を投資家にきちんと開示する必要があります。投資信託は個人投資家が「信じて託す商品」であるということを、運用会社には肝に銘じてもらいたいものです。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。

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