賃上げなき物価上昇で、リアルにお金が減っていく…やるべき&避けるべき行動リスト
・海外不動産投資
一般的に不動産はインフレに強いといわれますが、人口が減少して家が余りつつある日本では、インフレ時代でも住宅価格が上昇するかどうかは不透明です。そこで海外です。ちょっとハードルが高いと感じるかもしれませんが、新興国などでも所得水準の上昇とともに物価は上昇していますから、海外での不動産投資も選択肢に上がるでしょう。
物価が上昇する国では、家賃を払うくらいなら今買っておいたほうがよいと多くの人が考えますから、インカムゲインはあまり期待できない一方、10年、20年とかけて不動産価格が上昇するキャピタルゲインの期待があります。ただし、ローンを組んでの取得の場合は金利も上がる可能性があり、取り扱いがあるなら全期間固定型を選びたいところです。
・外貨預金
インフレとは物の値段に対して現金の価値が負けていくということで、対外的にも通貨が弱くなることを意味しますから、円安になります。となると、対円で強くなる可能性のある外貨に換えておくことです。また、景気の回復が伴わないのに物価が上昇するスタグフレーションが起こると、株や不動産の価格は上昇しにくいですが、その場合でもインフレでは円安に振れやすいので、外貨投資は資産防衛の一助となります。
ただし、いわゆる外貨預金では往復で2円ほどの手数料がかかる金融機関が多いため、手数料の安いネット系銀行の利用や、FXでレバレッジ1倍で運用するという方法もあります。
・変動金利型国債・物価連動国債
インフレが進むなら金利も徐々に上がっていくため、固定ではなく変動金利の個人向け10年国債などが視野に入ってきます。物価上昇によって価格が上昇する物価連動型の国債に投資するという方法もあります。日本では個人向けの物価連動国債の販売は延期となっていますが、投資信託なら扱いがあります。
避けたほうが良さそうなもの
・長期の定期預金、確定給付型の生命保険、個人年金
こうした商品の場合、戻ってくる金額自体は目減りしない安心感がある一方、インフレ時に低金利で資金がロックされれば、実質的な目減りとなります。継続的なインフレの場合、定期預金の金利も徐々に上がっていきますから、長期の定期預金は初期の低い金利が適用され続けてしまいます。そこで当初は短期タイプにしておき、「この金利なら満足できる」あるいは「さすがにこれ以上は上がらないんじゃないか」と思える水準で長期に切り替えたほうが良さそうです。
個人年金や返戻率の高い貯蓄型保険は、最大の所得控除が受けられる最小金額だけ入るのが最も利回りの良い方法で、逆にそれ以上の保険を掛けると、インフレ時にはほかに預ければもっと高金利の恩恵を受けられたはずが、受けられなくなります。かといって中途解約は元本割れして目減り、となって身動きがとれません。なので、もし過大に加入しているなという人は、解約よりも掛け金を減らすという対応が良いでしょう。
・タンス預金・普通預金
これは言うまでもありませんね。タンス預金は持っていても利息ゼロで実質的に目減りするだけ。普通預金も金利が上がっても雀の涙程度で、将来もし口座管理手数料がかかるようになれば、相殺されてしまいます。
現物の金・銀・プラチナ
一般的にインフレに強いといわれる金やプラチナを保有する方法も挙げられます。日本国内のインフレでは円の価値が下がる、つまり円安になるわけで、コモディティ価格はドルベースで決まりますから、相対的に価格が上がることになります。
ただし、世界的な金利上昇という場面では、コモディティは金利がつかないため避けられやすくなります。高金利時代にはほとんどの人は金利がつく運用対象を選ぶものだからです。ただ、「有事の金」ということわざもありますし、EV(電気自動車)時代には排気ガスの触媒需要がメインのプラチナから銀の需要にシフトするのではと指摘されているなど、判断は難しいところではあります。そのためこうした商品は、分散投資として資産の一部を投下するにとどめておく、というスタンスが望ましいかもしれません。「東京ゴールドスポット100」という先物商品なら、金地金などの現物よりも低予算でも始められます。
以上、いくつか紹介してきました。現時点では金融緩和によって世界的なカネ余りで、株や不動産などに資金が集まる、いわゆる資産インフレという状況ですから、こうしたものに資金を投下するのがもっともパフォーマンスが高い方法のひとつといえます(国内不動産はもう遅いかもしれませんが)。
とはいえ、これらは生活必需品ではないので、仮に何もしなくても、資産が増えないかわりに減りもしないというだけです。なので、現時点で投資や運用に興味がないとしても、それはそれで問題ないかもしれません。しかし円安や金利上昇となると、リアルに出費増を招きお金が減ることになりますから、何もせず無策というのは避けたいものです。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)