今どき生命保険で貯蓄を考えると大損しかねませんよ…払う保険料が、受け取る保険金より多い実態
昔むかし、生命保険は貯蓄にもなるといわれた時代がありました。その証拠に、生命保険には「貯蓄型」と「掛け捨て」という区分があったのです。しかし、それは昔の話で、今では生命保険で貯蓄になるような商品はありません。
貯蓄型の代表的な商品だったのが、郵貯、今のかんぽ生命の養老保険や、死んだら必ず保険金が支払われる終身保険でした。実際、昔は利回りの良い金融商品として、一時払いの養老保険の利率が新聞紙上に掲載されていたこともあったのです。
しかし、今は状況がまったく違います。世の中はすでに史上最低の市場金利が長く続き、生命保険商品の運用の基になる利率(予定利率)が、バブルといわれた当時の5.5%から、現在は0.25%にまで落ち込んでいます。そんな状況では、生命保険で貯蓄なんてまったく得策ではないのです。
例えば、ニッセイの終身保険は、30歳男性が60歳まで保険料を支払うとして、その保険料は保険金額1,000万円で月3万90円です。つまり、60歳までの保険料の合計が1,083万円で、いつか受け取れる保険金額の1,000万円を超えてしまうのです。これでは、貯蓄型商品なんてとてもいえません。
かんぽ生命の養老保険でも、30歳男性が60歳満期の商品を契約すると、月々の保険料は3万600円で、30年もあとに満期金1,000万円を受け取るために、毎月こつこつ総額で1,100万円以上支払わなければなりません。
もちろん、どちらも60歳よりも随分前に亡くなれば、保険金額は、支払った保険料よりも多くなります。例えば30歳の人が50歳で亡くなった場合、1,000万円を受け取ることになりますが、それまでに支払った保険料が720~730万円になりますから、差し引き270~280万円の保障しか受けられなかったことになります。
終身保険を契約する理由は、保険を売る側にしかない
こうした終身保険や養老保険の保障の部分だけ賄うのであれば、逓減定期保険や収入保障保険で手当でき、その保険料は月1,000円程度です。月々3万円も支払うのであれば、1,000円でまさかのときの保障を確保し、残りの金額を貯蓄に回すことで手元資金の流動性も増しますし、そのうちの一部を、以前にも紹介したiDeCo(個人型確定拠出年金)で運用したほうがずっと得策です。つまり、生命保険は貯蓄にもなるなんて、時代錯誤なことを漠然と考えていると、大損することになりかねないのです。