3つ目の「所得税が戻ってくるのでおトク」は、まず、減価償却費の意味を正しく理解しているかどうかが大切である。減価償却費は、「お金が出ていかないのに経費として認められる費用」と認識されがちだが、正しくは「資金を先に投資したが、その単年度の経費とせず、次年度以降の減価分に応じて少しずつ経費として計上する費用」ということである。
つまり、お金は先に出ているにもかかわらず、後から少しずつ価値が減った分を経費とするのである。この価値の減少分を差し引いて赤字になるということは、そもそも儲からない投資と考えるべきである。
有利な資産設計をするために
とはいえ、不動産投資そのものがダメというわけでは決してない。やり方によっては有利な資産設計となるのも事実である。
では、どのような方法がいいのだろうか?
まず、前述した業者のセールストーク「高利回り」「私的年金」「所得税が戻る」といったフレーズは、かえって本質をわからなくさせてしまうので、これらの言葉に振り回されてはいけない。もっと単純に、
「将来的にも利益が出やすい優良物件を、いかに安く仕入れるか?」
と考え、実行することが重要である。
そのためのポイントは主に3つ。1点目は、「安く仕入れる」こと。安く仕入れる方法には、例えば「競売物件」「任意売却物件」「バルク(まとめ)買い物件」などがあるが、こうした情報ルートを入手することはもちろん、資金力や物件を見る目が重要となってくる。
2点目は、「リスク対処力」。収益とリスクには相関関係があり、一般的にリスクが上昇すると要求利回りも高くなる。不動産投資のリスクには、空室、家賃滞納、家賃下落、入居管理、物件劣化、再販リスクなどがあるが、単純にリスクが低ければいいということではなく、発生するリスクに対し対処できれば問題ないと考えていいだろう。逆にいえば、対処できないようなら、やめたほうが賢明だ。
3点目は、「出口戦略」である。どんなに優良な物件であっても、売却した時点で損失が出ると、その分、収益を圧迫してしまうことになる。ずっと物件を持ち続けるのであれば問題はないが、将来的に売却する、または建物の老朽化により建て替える場合には、事前に将来を見据えた戦略を持つことが重要になる。
キーワードは容積率
不動産業務に詳しいFP・通称きゃさりんさんは、「例えば、容積率に余裕のあるマンションを購入し、将来、建て替え時において等価交換【註1】の還元床(等価交換で新たに取得する床)が増加するようなケースは、非常に効果的な出口戦略」と話す。
不動産投資は、収入の有る無しにかかわらず固定費が多くかかり、収益がいったん下がると改善を図ることが難しい(=上がりにくい)、失敗して物件を売却しようとしても買い手が見つからない、売ったとしても大きな損失が出るなどの特性がある。