自然災害への備えとして損害保険は有効だが、住宅・家財への補償は火災保険と地震保険になる。火災保険の補償内容は大きく分けて3つ。火災・落雷・破裂・爆発などの「火災リスク」、風災・ひょう災・雪災・水災などの「自然災害リスク」、そして盗難や建物外部からの落下・飛来・衝突といった「日常生活リスク」だ。
現在の火災保険は火災そのもののほか、自然災害も広く補償されるパッケージ商品が主流だ。名称は火災保険でも、保険料に占める割合が大きいのは圧倒的に自然災害リスクだ。保険会社にとっては火災リスクだけ扱っていては商売にならないという事情があるので、パッケージ商品にしているのである。
ちなみに、火災による保険会社の支払いは1万件のうち0.07件程度といわれる。また、一生を80年として、その間に火事に遭う確率は約4%ともいわれている。よって、自然災害リスクを補償の対象外にすれば、保険料はぐっと安くなるのだが、単純にすべてを外すわけにもいかない。一口に自然災害といっても、地震や津波、台風、竜巻、大雨、大雪など多岐にわたる。当然、地域によって発生する災害の種類も頻度も異なるので、契約者ごとに保険の補償内容を変えなくてはならない。
例えば、浸水リスクが低い高台の一戸建てやマンションの高層階なら「水災」を外しても問題ないだろうし、台風の心配がない地域や風に強い建物なら「風災」を外しても大丈夫だろう。沖縄に住んでいる人なら、雪害の心配はゼロである。火災保険は補償内容をできるだけ自由に選べてオーダーメイドで設定できるものを選んだほうがよい。
しかし、実際は商品のパッケージ化をガチガチにして、特定の補償を外せないようにしている損保会社が多い。生命保険と医療保険もかつて、生保レディーと呼ばれる女性営業員が昼休みの職場にパッケージ商品を売りに来て、多くの人はなんの疑問も持たずにそうした保険を契約していた。しかし、外資系生保がライフプランナーと呼ばれる営業担当者を使い、個々人に合わせたオーダーメイドの保険商品を販売するようになってからは、大手国内生保も商品設計と販売方法を見直すようになった。そして、ネット専業生保は商品のシンプル化と保険料の格安化をさらに進めた。
一方、火災保険は残念ながら、生保や医療保険ほどの自由度はまだないが、賢い消費者になって、保険会社を見極めることはできる。
●地震保険料改定、得する人も多い?
地震保険の保険料が、7月から平均15.5%値上げされた。これは、政府の地震調査研究推進本部が震源データなどを見直したことにより、地震の起きる確率をより正確に保険料に反映したものだ。