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小林敬幸「ビジネスのホント」

なぜ新規事業は失敗するのか?陥りやすい残念なパターン、事業計画が狂うワケ

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者

よくある残念な新規事業提案1:テーマパーク・集客施設

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 制約条件なく新規事業を考えようとブレストすると、必ず出てくるのがテーマパークなどの集客施設だ。テーマ性のあるショッピングスポット、イベントスペースなどが提案される。これは、ひとりの消費者としてニーズを理解できるし、既存の施設に身近に接することができるので、自分ならこうすると思いつきやすいからだろう。新興の事業家も、集客施設ビジネスに手を広げることが多い。

 しかし、第三セクターのテーマパークを典型例として、多くの集客施設ビジネスは図1とはかけ離れた図2のような事業利益をたどり、結局、失敗している。ただし、海外からの旅行客が急増している今の日本のホテルは別だ。

 集客施設事業が陥りがちな事業収支を図2で説明してみよう。

・売り上げ(青線)は初年度が最高で、その後右肩下がりに減少する。開業時の話題性で人が来るが、飽きられてリピート客が来ないと来場者は毎年減少してしまう。

・費用のうち施設建設費、維持費、人件費などの固定費が多く、変動費の比率が低い。従って、売り上げ(青線)が減少する角度が急であっても、費用(赤線)が下がる角度は緩やかであるため、売り上げが損益分岐点を超えて下がると、赤字が急拡大する。

・売り上げ上限が、実際は想定よりも低い。集客施設はスペースが限られるので、どうしても客をさばききれる上限がすぐにくる。さらに土日と平日、昼と夜など、集客の繁閑に大きな波があるので、実際に売り上げを取れる上限は、理論上の客をさばけるキャパシティ(処理能力)の40%以下だ。製造業の工場やラインなどでは、稼働率が50%より下がることを最初から想定することはあまりないので、こうしたビジネスの経験のある人は、稼働率20%といった売り上げの想定ができない。だから、実際の売り上げ上限が想定よりも大幅に低くなる。そうすると、話題にもなって評判も良く成功したようにみえても、想定したほど儲からないことになる。

 逆にいうと、この失敗パターンに当てはまらない仕組みを用意していると、集客施設で成功しやすい。ディズニーランドのように、定期的に新規大型アトラクションを入れてフレンドリーなサービスを用意してリピート客が来るようにすれば、来客は減少せずに新規客の分ずつ成長できる。あるいは、移動式遊園地、テントによるサーカスなどは、立ち上げ初期から時がたつとともに売り上げが下がるのを予定に組み入れ、採算がとれなくなった頃に撤収する。これも立派な事業計画である。

 また、立ち食い、立ち飲みの飲食店や、スターバックスのようにテイクアウトが一定比率あるコーヒーショップなどは、客が施設に滞在する時間がゼロもしくは短いので、売り上げに比較して固定的な施設の費用が少なく、キャパシティも上げやすい。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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