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小林敬幸「ビジネスのホント」

なぜ新規事業は失敗するのか?陥りやすい残念なパターン、事業計画が狂うワケ

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者

よくある残念な新規事業提案2:コンサルタント業、スクール業

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 コンサルタント、スクールなどの新規事業提案もよくされる。戦略コンサルタント、ネット系コンサルタント、マーケティング系コンサルタント、ストレッチのスクールなどだ。これも自分が日常的にネットなどで説明を読んだり、ニーズを実感できたり、こうすればいいのにと思う機会が多いからだろう。先に挙げたテーマパークなどの集客施設に比べ、初期投資が大きくなく、失敗しても損失が少ないので提案しやすいのかもしれない。

 コンサルタント業、スクール業が陥りがちな事業収支を図3で説明してみよう。

・先に挙げたテーマパークなどの集客施設に比べ、初期投資が少なく固定的費用が少ないので、売り上げが小さい時から黒字化しやすい。従って、事業立ち上げ初期(図3の縦のy軸の近いところ)から売り上げ(青線)が費用(赤線)を上回ることも可能だ。例えば、1人でやっている経営コンサルタントなどは、事業初年度から黒字の場合も多い。また、費用のほとんどが変動費であるため、売り上げ(青線)が下がれば費用(赤線)も下がるので黒字を維持しやすい。そもそも、コンサルタント業の場合、費用を下回る売り上げしか取れない赤字受注はしない。

・一方で、評判が良くて黒字で売り上げが成長傾向にあったとしても、コンサル業は生産能力を上げるのに時間がかかり、売り上げを急成長させることができない。従って図3では、売り上げ(青線)の成長角度が非常に緩くなっている。

 戦略コンサルタントの契約金額は、(コンサルタントがかけた時間(月日)×そのコンサルタントの単価)がベースになることが多い。高給とはいえ、いわば「人海戦術」の一種なので、コンサルタントの人数を増やさなければ売り上げが伸びない。しかし、それだけの高いコンサル料を取れる人材を集め育てるのには相当な時間がかかる。実際、案件ごとにアドバイスをまとめる戦略コンサルで、上場企業に見合う程度の規模のビジネスを立ち上げるのは、ほぼ不可能に近い。例えば、若い女性向けのマーケティングアドバイスをするコンサル事業で上場企業の規模感の事業にスケールアップするのは、とても難しい。

 逆にいうと、この生産能力の急拡大ができないという問題点を解消すれば、規模感のある事業をつくることができる。例えば、M&Aのコンサルタントは、自分達がかけた時間ではなく、その買収案件の規模に比例したコンサルタント料を請求しようとしている。その場合は、コンサルタントの人数を増やさなくても売り上げを倍増することも可能になる。

 また、検索エンジン最適化のコンサルは、人手をかけて解明した最適化の手法を追加費用がほとんどなしに多数のクライアントに広めてサービス料を取ることができるので、一定の規模の利益を稼ぐことができるのだ。
(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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