その女性と話をしていて感じたのが、会話の中に余韻があるということ。相槌であったり、話す合間の呼吸であったり、会話の中に余韻があるのだ。不思議と、その余韻の中で、聞くこちら側も理解が深まったり、もっと聞きたいという気持ちになった。楠瀬氏によると、聞く相手に余韻を与えることは、相手に考える時間を与えているのだという。余韻を与えるには「相槌」が重要であり、相槌をうまく使いこなすことで感情表現ができ、人を惹きつけ、心を摑むことができるという。
また、楠瀬氏が声とともに人が変化する点に注目し、医療への応用も可能ではと考えている。
「どの生徒さんも自分の声を出せるようになると、顔つきも変わり、自己表現をしたいという気持ちに変わり、どんどん元気になっていきます。将来は、心の問題などの治療にも応用できるようになればいいなと考えています」(楠瀬氏)
アーティスト楠瀬誠志郎として
楠瀬氏は、音楽家の両親の下、幼少時代から音楽に触れ育った。高校生時代にプロを目指し音楽活動を開始。その声は「天使の声」ともいわれアーティストして活躍する一方で、多くのアーティストへの楽曲提供、CM音楽制作、執筆などを行い多才である。代表作の郷ひろみへの提供曲『僕がどんなに君を好きか、君は知らない』は、空前のヒットとなった。
現在、Breavo-paraで行うボイストレーニングの原型は、楠瀬氏の父がつくったものである。しかしながら、楠瀬氏の父は、志半ばで楠瀬氏が24歳の時に他界した。それから楠瀬氏は、40歳になったら父の遺志を継いでボイストレーニングを確立しようと決めていた。実際に40歳からボイストレーニングを引き継ぎ、がむしゃらにがんばってきた。それから17年がたち、生徒もスタッフも順調に育ったことから昨年、自身の音楽活動を再開し、ライブ活動や舞台演出などにも力を注いでいる。ボイストレーニングの指導でどう発声が変わるか、どう人が表現力を持つようになるかをアーティスト・楠瀬誠志郎が体現している。
今後、日本でもビジネススキルとしてボイストレーニングを学ぶビジネスパーソンが増えていくのかもしれない。
(文=道明寺美清/ライター)
ボイストレーニング(ボイトレ) Breavo-para www.breavo-para.com/
3月17日(土)には、アーティスト・楠瀬誠志郎のライブがブルース・アレイ・ジャパン (http://www.bluesalley.co.jp/)で行われる。