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IGPIパートナー塩野誠「The Critical Success Factors Vol.9」

日本のコンテンツは韓国に負けている?タイのGDPは神奈川県?アジアのリアル

文=塩野誠
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 ショッピングモールで日本のアパレルと100円ショップで買い物をした後は、日本の映画やドラマを見てもらいたいものですが、ここでは東南アジアのかなりの範囲で韓国製コンテンツが市場を獲得しています。

●日本のコンテンツは韓国に負けている?

 例えば、タイやマレーシアの放送局やコンテンツ制作の誘致を担当している官僚に話を聞くと、「日本のドラマはストーリーも複雑で質が高いのはわかっている、しかし韓国作品はずっと安価なのだよ」という声が聞こえてきます。ある年配の方は、「日本はアジアの先進国として尊敬しているが、残念ながらコンテンツ分野は『おしん』以降目立っていない」と言っていました。私は「日本の若者は、もう『おしん』を知りませんよ」と返しました。そしてタイの有名なマスコミ業界の方は「若者のファッションやメイクは流行の海外ドラマに影響されるので、日本もがんばったほうがいい」とも言っていました。

 私は、世界は多様であるべきという思想を持っていますが、日本をこよなく愛しているので、ジョゼフ・ナイのソフトパワー論を持ち出すまでもなく、日本のクリエイターとそれらを海外に普及させるプレイヤーの方々には本当にがんばってほしいと思っています。そこまで仕掛けなくても、きゃりーぱみゅぱみゅさんやBABYMETALさんのように、海外でも刺さるようなセンスはたくさんあることでしょう。好感を持たれるというソフトパワーは、日本人を名乗るバックパッカーにとっても、製品を売る日本企業にとっても大切です。

●日本の魅力を体験してもらう

 2月22日付日本経済新聞によれば、2011年のアジア・大洋州での国際会議の開催件数はシンガポールが142件と最も多く、東京は11位(50件)にとどまるとのことでした。シンガポールのようにチャンギ空港に降り立ってから30分ほどでミーティングに入れる利便性や、国際会議のオプションにカジノやシティリゾートをつけられるのは魅力的だと思いますが、東京もまだまだアジアのハブとなれる情報とインフラがあると思うので残念です。

 東京には街のラーメン屋さんからフルコースを出すお店まで世界最高峰のレストランが立ち並んでおり、少しでも日本に興味を感じて海外から来てもらえれば、その食文化と路上で酔っ払っててもすぐに生命の危機とはならない治安の良さを体験してもらえるのに、とも思います。

 東南アジア各国が成長し、「明日はもっと豊かになれるはずだから、ローンで車を買います」という若者たちに、エンターテインメントやそのセンスの面で成熟期にある先輩国家として魅力的なアートやコンテンツを供給できればいいなと思います。ちなみに経済成長の躍動感に影響を受けるのか、東南アジア各国でビジネスをがんばっている日本人はいい顔をしているように感じます。
(文=塩野誠/経営共創基盤 パートナー マネージングディレクター)

※本稿は筆者個人の意見であり、所属する団体等の見解ではないことをご了承ください。

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塩野誠

塩野誠

経営共創基盤 パートナー/マネージングディレクター

ゴールドマン・サックス証券を経て、評価サイト会社を起業、戦略系コンサルティング会社のベイン&カンパニーを経た後、ライブドアにてベンチャーキャピタル業務・M&Aを担当し、ライブドア証券取締役副社長に就任。現在は経営共創基盤(IGPI)にて大企業からスタートアップまで、テクノロジーセクターの事業開発、M&Aアドバイザリーに従事。著書に『プロ脳のつくり方』(ダイヤモンド社)、『リアルスタートアップ』(集英社)がある。慶応義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。

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