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大塚将司「反メディア的!その記事、ダマされていませんか?」第13回

アベノミクス・成長戦略の“盲点”…規制緩和・構造改革では成長しない?

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「Thinkstock」より
 アベノミクスの評価がはっきりするのは2〜3年後だろうが、その決め手となるのは6月14日に閣議決定した“第3の矢”、成長戦略の成否である。中身はこれまで安倍晋三首相が講演などで小出しにしており、概要はすでに明らかになっているが、総花的で照準がはっきりしない感は否めない。

 その原因を考えると、行き着くのは1つの幻想である。多くの日本人は「“失われた20年”を招いた最大の原因は守旧派が規制緩和に抵抗、経済システムの改革を怠ったためだ」と思い込まされている。この10年あまり、政府が成長戦略を策定する時には、規制緩和と構造改革が最重要と喧伝され、安倍政権の“第3の矢”も同様だ。

 規制緩和と構造改革を断行すれば、日本企業が民間活力を発揮して強い競争力を持つ事業を構築するはずだ、その事業は、やはり民間が勝手に構想すればいい--。これは、いい加減な戦略と言わざるを得ない。規制緩和と構造改革は市場開放と新興勢力の事業拡大に役立つのは間違いないが、日本経済の成長にはつながらない。

 欧米諸国の政府当局者やマスコミは、判で押したように「日本が規制緩和と構造改革できるかどうかがカギになる」という趣旨の主張を展開する。自国の利害を前提にすれば、日本が輸出をてこに成長することは望ましいことではなく、成長しようがしまいが、市場開放させれば自国の参入機会が拡大し、得策なのだ。

 利害の異なる、日本のマスコミの主張は違わなければならないが、欧米諸国の主張を“オウム返し”する。欧米諸国からなんらかの利便供与を受けている疑いすら囁かれる学者やエコノミストなどの識者の一部が、“オウム返し”するのはやむを得ないが、マスコミがそれでは困るのだ。

●外需と内需

 そもそも、国家経済の発展には外需を増やすか、内需を増やすか、あるいは両方とも増やすことが大前提になる。この視点で、日本の現状をみれば、すでに人口減社会に突入している。内需の個人消費を増やして、国民の満足するような成長を実現することは不可能だ。

 内需をてこに成長したいなら、公共事業など国が需要を引っ張る財政出動する以外に手はない。しかし、これは世界最大の債務国である日本の財政事情を悪化させるだけだ。結局、外需を増やし、企業の設備投資を拡大させる以外に方法はない。

 では、規制緩和と構造改革は何をもたらすのか。増えないパイ(内需)を取る主体が変わるだけだ。現状維持なら、守旧派の主体が今まで通りシェアを保ち、現状が打破されれば、守旧派がシェアを落とし、外資や新興勢力がそれを奪う。それだけのことだ。主役交代のタイムラグで短期間は成長にプラスに働くことがあっても、パイは増えないのだ。

 こういうと、次のような批判があるかもしれない。高齢化社会では医療関連費は増える、だから医療関連分野の規制を緩和して、新規参入が市場を刺激する、と。だが、高齢者が飲む薬の量が増えるわけではない。やはり、パイを獲得する主体が変わるだけである。

 しかも、人口減の高齢化社会では医療関連費は増えるが、その分、高齢者以外の世帯の消費支出は減る。日本の内需全体の増加につながらず、内需の増加を前提にした成長戦略にはなりようもないのだ。

●カギは輸出産業の拡大

 つまるところ、輸出拡大を掲げるほかないわけで、安倍政権も第3の矢で農業を輸出産業に育成する方針を掲げる。農業で外貨を稼ぐには小麦などの穀物、そして、トウモロコシなどの飼料を輸出する以外にない。しかし、日本の農産品の中で、輸出で稼げるのは高級食材ぐらいだろう。それでは日本経済を支える規模の外貨は稼げない。

 現在約10兆円のインフラシステム受注額を2020年に30兆円にまで増やすことを目指すインフラ輸出は農業よりもましだが、継続性がなく、雇用を含めすそ野の広い製造業で外貨を稼ぐのが王道なのだ。

 この意味で、オバマ大統領が2月の一般教書演説の中で、製造業の復活に向け3つのハブを立ち上げて3Dプリンター(立体物を表すデータをもとに、樹脂を加工して積層造形する装置)の技術開発に照準を置くと表明した米国とは大違いだ。

 3Dプリンターは、ものづくりに欠かせない次世代の技術だ。日本の金型などの卓越した技術が、取って代わられる可能性を秘めている。

●製造業の競争力維持・強化