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筈井利人「陰謀論を笑うな!」

ロスチャイルド陰謀論の化けの皮を剥ぐ…デタラメだらけの挿話を徹底検証

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「Thinkstock」より

 陰謀論には、世界を支配するという謎めいた集団や一族が登場する。そのなかでも圧倒的な知名度を誇るのは、ロスチャイルド家だろう。ユダヤ系の金融財閥であるロスチャイルドについては、その卓絶した富と力、冷徹で非情な性格を印象づけるさまざまなエピソードが陰謀論で語られる。

 けれども、これらの「ロスチャイルド伝説」は果たして本当なのか。今回はその代表例とされる、ワーテルローの戦いにまつわる挿話をみてみよう。

破産しかけた過去


 ワーテルロー(ウォータールー)の戦いとは、1815年6月18日、フランスのナポレオンが英国・オランダ・プロイセン連合軍に大敗し、百日天下に終止符を打たれた有名な戦いである。

 多くの陰謀本によれば、当時の英国ロスチャイルド家当主、ネイサン・ロスチャイルドが、ナポレオン敗北の報せを独自の密使によっていち早く入手し、その情報を他の人々に隠し、英国債の取引で莫大な利益をあげたという。

 さて、これらのエピソードは事実なのか。以下、検証しよう。

 第1に、戦争の結果がロスチャイルド家にもたらした影響である。ハーバード大学教授で経済史が専門のニーアル・ファーガソンは、ロスチャイルド家は連合軍の勝利で「大儲けをするどころか、もう少しで破産するところだった」と指摘し、「彼らの財産は、ワーテルローの戦いによってではなく、この戦いにもかかわらず築かれたというほうが正しい」(『マネーの進化史』<仙名紀訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫>)と述べる。

 ネイサン・ロスチャイルドは、それまでのナポレオンの戦争と同じように、今回の戦争も長引くだろうと予想していた。そしてこの読みにもとづき、ネイサンとその兄弟は、戦時中に需要が急増すると予想される金を大量に買い込んだ。まさか戦いがあっという間に終わるとは、つゆほども思わずにである。連合軍側政府への融資や軍需品の買い付けで、ネイサンは大きく儲けるつもりだった。

 けれども、戦いが早々と終われば狙いは外れる。

「彼ら兄弟は、いまやだれにとっても無用の金貨の山の上にすわっているのも同然だった。そのカネが必要とされる戦争は、終わってしまったからだ。平和が訪れれば、ナポレオンに応戦した軍隊は不要になり、連合軍も解散する。したがって兵士の給料も、イギリスの盟友諸国に支給する予定だった金も支払われなくなる。戦時中に高騰した金の価格が暴落することは、目にみえていた」(ファーガソン前掲書)

 戦争の期間を読み誤ったネイサンは、今や巨大で増え続ける損失に直面することになったのである。

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