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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」 第1回

指揮者ほど最高の職業はない!オーケストラ楽員との丁々発止の後の演奏は病みつき

文=篠﨑靖男/指揮者

 そんなことが、リハーサル直前になって頭に重くのしかかってきて、前日から宿泊しているホテルのベッドから早く起きだし、机の電気スタンドをつけて、楽譜を開けるわけです。ただただ時間がすぎることもあるけれど、いくらあがいてみても、どうにもこうにも落ち着かないのです。これは、何年間指揮者をやっていても同じです。高校生のときの試験の朝のようです。指揮者なんて、毎回、公開試験を受け続けているようで、もうたまらないのです。

病みつきになる「指揮者」という仕事

 話は変わりますが、僕の自宅のご近所に、若くして大手建築会社の現場監督を務めている人が住んでいます。彼は、与えられた設計図を読み込み、時には現地に足を運んで綿密に準備をします。しかし、仕事をする現場の職人さんは、年齢も上ではるかに経験豊富。実際の現場では、目の前にいるそんな熟練の職人たちとやり合わなくてはいけないわけで、現場監督として指示を出していくのは簡単なことではないようです。「怒られてばっかりですよ」と話すのを聞いて、「なんだか指揮者と似ているなあ」と思いました。

 指揮者も同じようなもので、家で楽譜を勉強するだけの時間と違い、現場では実際に楽員に指示を出さなくてはなりません。しかし、いくらがんばったからといって、自分の思いに相手が必ず同調してくれるわけではありません。時には「指揮者はそう言っているけれど、僕はそう思わない」と思う楽員もおりますし、もっとひどくなると「あの指揮者は間違っている。ひどいね」と、休憩中に周りに話す人までいます。

 しかし、“100人いれば、100の違う意見がある”ことは当然で、これをどうやってひとつにまとめていくのかが問われるのです。とにかく、ひとりでも多くの楽員に自分の考えを理解してもらう努力、戦略が必要で、「支持率100%」は無理でも、なんとか70%くらいまでこぎつければ大成功といえます。

 さて、そんなこんなで、リハーサルに向かいます。自前のホールを持っている海外のオーケストラとは違い、日本のほとんどのオーケストラは、演奏会当日しかコンサートホールを使用できません。大概はリハーサル場を持っており、そこに事務局も構えていることが多いです。

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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